永瀬狂三

永瀬狂三：京都大学の建築を支えた建築家

永瀬狂三（ながせ きょうぞう、1877年10月23日 - 1955年1月21日）は、大正から昭和戦前期にかけて活躍した日本の建築家です。東京帝国大学（現東京大学）建築学科を卒業後、京都帝国大学（現京都大学）の営繕組織に長く在籍し、京都市を中心に数多くの建築物を手がけました。そのため、京都大学には彼の作品が数多く残っています。

生涯

永瀬狂三は、1877年（明治10年）に愛知県渥美郡田原（現在の田原市）で生まれました。彼の家系は、祖父が田原藩の国元家老を務めるという由緒あるものでした。名前の「狂三」は、『論語』の一節「不得中行而与之、必也狂狷乎、狂者進取、狷者有所不為也（中行を得てこれに与えずんば、必ずや狂狷か、狂者は進みて取り、狷者は為さざる所あり）」に由来するとされています。

1906年（明治39年）10月に東京帝国大学建築学科を卒業後、横浜市の下田菊太郎の事務所（下田築造合資会社）に勤務しました。その後、1908年（明治41年）からは辰野・片岡設計事務所で実務経験を積みました。1909年（明治42年）3月には、京都帝国大学建築部に嘱託として迎えられ、山本治兵衛のもとで大学施設の建築に携わることになります。

1917年（大正6年）には京都帝国大学工学部の講師となり、後進の指導にもあたりました。1919年（大正8年）10月、山本治兵衛の死去に伴い、建築部長に就任しました。1920年（大正9年）の組織改編により営繕課長となり、1929年（昭和4年）1月に退職するまでの10年間、京都帝国大学の営繕組織を率い、大学施設の拡充に尽力しました。

京都帝国大学においては、初代建築部長である山本治兵衛や、建築学科教授であった武田五一の存在が大きかったため、永瀬狂三個人の代表作と呼べるものは少ないとされています。しかし、大学施設以外にも、福井県敦賀市にある大和田銀行本店（現在の敦賀市立博物館）など、いくつかの作品を設計しています。

1920年（大正9年）からは京都高等工芸学校（現在の京都工芸繊維大学）の講師も兼任し、後進の育成にも力を注ぎました。京都帝国大学営繕課長を退職後の1935年（昭和10年）には、京都工学校の校長に就任し、1945年（昭和20年）までその職を務めました。

1955年（昭和30年）、77歳で生涯を閉じました。

主な作品

大和田銀行本店（現敦賀市立博物館）
京都大学における各種施設

参考文献

日本建築学会編『新版 日本近代建築総覧』（技報堂出版、1983年） ISBN 476552003X
石田潤一郎『関西の近代建築』（中央公論美術出版、1996年） ISBN 4805508264
アトリエM5・宮本和義『近代建築散歩 京都・大阪・神戸編』（小学館、2007年）ISBN 4093876967
『広報たはら』平成17年11月号・12月号（田原市）
『建築と社会』第36輯第2号（日本建築学会、1955年）
京都大学百年史編集委員会編『京都大学百年史　総説編』（京都大学後援会、1998年）

外部リンク

たはら歴史探訪クラブ　幻の建築家 永瀬狂三(1) (PDF)、『広報たはら』平成17年11月号
たはら歴史探訪クラブ　幻の建築家 永瀬狂三(2) (PDF)、『広報たはら』平成17年12月号
* 大分市美術館　永瀬狂三建築作品

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