山本治兵衛

山本治兵衛（やまもと じへえ）

山本治兵衛（1854年4月9日 - 1919年10月24日）は、明治から大正にかけて活躍した日本の建築家です。彼は主に文部省に技師として勤務し、高等教育機関や病院などの公共建築物を数多く手がけました。

生涯

安政元年（1854年）、山本治兵衛は江戸（現在の東京都千代田区）で生まれました。山本家は代々、大名屋敷の設計や修繕に携わる家柄でした。治兵衛は、工部省の建築技術者であった立川知方に師事し、日本の伝統的な建築設計や製図の技術を学びました。

明治11年（1878年）9月、24歳で東京府庁の土木課に入り、病院建築や河川開削工事などに従事しました。明治17年（1884年）には、小笠原出張所庁舎の建築工事のために小笠原へ出張しています。明治18年（1885年）に工部省鉄道局へ転じ、同年の工部省廃止に伴い鉄道局に所属しました。鉄道局時代には、信越本線の上田・直江津間の工事に携わっています。

明治20年（1887年）7月、文部省の雇員となり、当時営繕組織が所属していた会計局に勤務しました。京都における第三高等中学校の創設工事の後半では、現場責任者として工事を指揮しました。その他、第三高等中学校医学部（岡山市）や岡山県病院の建設にも関わったと考えられています。その後、東京美術学校の技手を経て文部属専任となり、久留正道営繕掛長の下で、高等中学校などの教育施設の監理・設計を担当しました。

明治31年（1898年）6月、京都帝国大学への出張を命じられ、同大学の創立工事を担当しました。この間、文部省技師に昇進しています。明治33年（1900年）には、新設された文部省京都出張所の所長に就任し、第六高等学校（岡山）、第四高等学校（金沢）、第七高等学校造士館（鹿児島）など、西日本における文部省直轄学校の工事指導・監督も担当しました。明治38年（1905年）には福岡へ出張し、京都帝国大学福岡医科大学（後の九州帝国大学）の創設工事の指導・監督にあたり、翌年には京都出張所長に戻っています。

明治40年（1907年）6月、京都帝国大学の技師となり、京都帝大に新設された建築部の初代部長に就任しました。文部省京都出張所長心得も兼任し、引き続き関西地域における学校工事の指導を行いました。

大正8年（1919年）、京都帝国大学建築部長の職にあるまま逝去しました。

年譜

1854年（安政元年）：江戸に生まれる。
1878年（明治11年）9月：東京府土木課雇。
1881年（明治13年）7月：東京府御用掛・土木課工事部勤務。
1883年（明治15年）10月：土木家屋橋梁掛に転任。
1884年（明治16年）12月：小笠原出張。
1885年（明治18年）8月：工部省鉄道局勤務。12月鉄道属。
1887年（明治20年）：文部省雇。
1888年（明治21年）：第三高等中学校に出張。
1891年（明治24年）：本省に帰任。
1892年（明治25年）：東京美術学校技手兼文部属。
1893年（明治26年）：文部属。
1896年（明治29年）：文部技手。
1898年（明治31年）：京都帝国大学に出張、文部技師。
1900年（明治33年）：文部省京都出張所長。
1905年（明治38年）：文部省福岡出張所長。
1906年（明治39年）：文部省京都出張所長。
1907年（明治40年）：京都帝国大学技師・建築部長。
1919年（大正8年）：死去。

参考文献

京都大学百年史編集委員会編『京都大学百年史　総説編』（京都大学後援会、1998年）
宮本雅明・谷直樹・石田潤一郎「山本治兵衛の建築活動と明治後期における高等教育施設の外観意匠　高等教育施設の史的研究（4）」『日本建築学会論文報告集』310号（1981年12月）

関連項目

永瀬狂三 - 京都帝大建築部の部下、後任の建築部長。
小牧健夫 - 娘婿

もう一度検索