永見尊

永見尊氏は、日本の会計学界において、特に監査論の分野で重要な貢献をしている研究者の一人です。1965年に広島県で生まれ、その学究の道は千葉県立木更津高等学校を卒業後、千葉大学法経学部経済学科へと進むことから始まります。千葉大学では山浦久司氏のゼミナールで学び、経済学の基礎を築きました。

大学卒業後、さらに専門性を深めるべく、早稲田大学大学院商学研究科の修士課程に進学。そこでは高名な会計学者である染谷恭次郎氏に師事しました。修士課程修了後も研究への意欲は衰えず、同大学院の博士課程へと進み、藤田幸男氏や小川洌氏といった教授陣の指導を受けながら、より高度な研究に従事しました。1995年に博士課程を修了した後、永見氏は研究者としてのキャリアをスタートさせます。

最初の教職は、1995年4月に作新学院大学経営学部の専任講師としてでした。ここで教育者としての経験を積み、1998年4月には同学部の助教授に昇任しました。その後、更なる飛躍の場を求め、2005年4月には慶應義塾大学商学部に助教授として着任します。慶應義塾大学では、その研究成果と教育への熱意が認められ、2007年4月には同商学部の教授に昇任し、現在に至ります。慶應義塾大学では、自身の研究室を持ち、後進の指導にもあたっています。

学術的な業績としては、2009年9月に早稲田大学より論文博士として商学博士の学位を取得しています。博士論文を含む彼の研究は、主に監査論、特に監査意見の表明や公認会計士の独立性といったテーマに焦点を当てています。これらの研究は、日本の監査実務や会計基準の発展にも影響を与える可能性を持つものです。

また、永見氏は教育・研究活動と並行して、国際的な視点も取り入れています。2009年4月から2011年3月までの期間、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で訪問研究員として滞在し、海外の会計・監査研究に触れ、自身の研究に生かしました。この経験は、グローバル化が進む現代社会における監査のあり方を考える上で貴重な財産となっています。さらに、慶應義塾大学以外にも、早稲田大学、専修大学、日本大学などで非常勤講師を務め、幅広い大学でその専門知識を共有し、多くの学生に影響を与えています。

社会的な貢献としては、日本の公認会計士試験における重要な役割を担いました。平成25年から平成27年にかけて、公認会計士試験の試験委員を務め、次世代の会計専門家の育成と質の確保に寄与しました。

永見氏の研究成果は、多くの著作として公にされています。分担執筆を含むこれらの著作は、彼の専門分野である監査論に関するものが中心です。例えば、『AUDIT INQUIRY 質問の理論と技術』（2024年）、『財務諸表監査』（共著、2015年、2024年改訂版）、『条件付監査意見論』（2011年）といった単著や共著があります。また、『会計監査と企業統治』（体系現代会計学の一部）のように、企業統治と監査の関係性を論じたものや、アメリカの会計情報に関する重要な資料であるSECの「会計連続通牒」の共訳（第1巻、第3巻、第4巻）も手掛けており、海外の最新動向を日本の研究者に伝える役割も果たしています。これらの著作は、会計学の研究者だけでなく、実務家や公認会計士を目指す学生にとっても重要な文献となっています。

永見尊氏は、教育者、研究者、そして社会活動家として、長年にわたり会計学、特に監査論の発展に尽力してきました。その幅広い活動は、日本の会計実務と学術研究の双方に貢献し続けています。慶應義塾大学商学部には、彼の名を冠した研究会があり、そこでも活発な教育・研究活動が行われています。

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