永野一男

永野一男の波乱の人生

永野一男（ながの かずお、1952年8月1日 - 1985年6月18日）は、日本の有名な詐欺師であり、豊田商事を設立したことで知られています。彼の経歴は波乱に富んでおり、若い頃からさまざまな職業を転々としていました。

彼は岐阜県恵那市で生を受け、15歳の時に島根県浜田市の叔父宅で生活することとなります。現地の中学校を卒業後、集団就職で日本電装（現在のデンソー）に就職しましたが、2年の勤務の後に退職。その後は転職を繰り返し、商品取引業者の岡地に入社しました。岡地では営業成績が良好でしたが、顧客の資金を勝手に運用し、大きな損失を出したために解雇されました。その後も、1976年3月には大垣競輪場でスリを犯し逮捕されるなど、トラブルが絶えない日々を送っていました。

1978年、彼は東京都中央区銀座に豊田商事を設立します。その際の会社名の「豊田」は、彼が最初に就職したトヨタグループの自動車部品メーカー、日本電装に由来するものです。この名称を用いることで、顧客にトヨタグループの関連会社だと錯覚させる狙いがありました。

豊田商事は、金に関するペーパー商法を駆使して、数千億円の資金を集めることに成功。ランボルギーニ・カウンタックなどの高級車を購入し、さらに自家用クルーザーを持つなど、贅沢な生活を送っていました。しかし、彼はマスコミを極度に恐れ、顔を知られると命の危険があると考えていたため、社員や役員に対しても顔を見せることは殆どありませんでした。

1985年6月18日、永野は自宅マンションの玄関前で「今日逮捕」との情報を得たマスコミの取材班が集まる中、元上司に当たる自称右翼の男二人に襲撃されます。彼は窓ガラスを破られ、旧軍の銃剣で全身13箇所を刺され、その後病院に運ばれましたが、出血多量により午後5時15分に亡くなりました。享年32歳でした。永野が亡くなった際、所持金はわずか711円でした。また、彼は結婚せず生涯独身を貫き、理由として「妻に迷惑がかかる」との思いを抱いていたと言われています。

事件後、豊田商事の資産は差し押さえられ、カウンタックは管財人によって売却されることとなりますが、当時のスーパーカーブームはすでに過ぎ去っていたため、高値での売却は実現しませんでした。

永野一男の波乱に満ちた人生は、詐欺師としての栄華と同時に、悲劇的な最期を迎えたことを想起させます。彼の人生は、他者を欺くことのリスクや、贅沢な生活がもたらす危うさを示すような一例となっています。

もう一度検索