江分利満氏の優雅な生活

江分利満氏の優雅な生活

『江分利満氏の優雅な生活』（えぶりまんしのゆうがなせいかつ）は、1961年から1962年にかけて『婦人画報』に連載され、のちに著名な作家・山口瞳によって書かれた小説です。この作品は、戦中派である主人公、江分利満の視点から、昭和30年代の日本におけるサラリーマン生活をコミカルに描写しています。直木賞を受賞したこの作品は、戦後のサラリーマン文化を映し出しており、当時の人々の日常を垣間見ることができます。

あらすじ

主人公の江分利満は、東西電機の宣伝部に勤める典型的なサラリーマンです。大正15年生まれで、戦中派としての背景を持つ彼は、昭和30年代の日本社会の真っただ中で生活します。物語は連作短編の形式を取り、各章は「しぶい結婚」「おもしろい？」「マンハント」などの題が付けられています。江分利と彼の周りの人々のコミカルなやり取りを通じて、当時の日本社会の様々な側面が描かれています。

作品の刊行とメディア展開

この作品は1961年10月号から1962年2月号まで『婦人画報』に連載された後、1963年2月に文藝春秋から書籍として刊行されました。さらに、1968年2月には新潮文庫版が出版され、1992年10月には『山口瞳大全』に収録されました。また、2009年11月には筑摩書房からちくま文庫版も登場しました。

映画化

1963年にはこの小説が東宝により映画化されました。映画版では原作のエピソードが一つのストーリーにまとめられ、江分利満の職場が東西電機からサントリーへと変更されています。主人公がふとしたきっかけで直木賞を受賞するというエピソードも追加され、原作の趣を踏襲しつつ、より山口瞳の自伝的要素が強くなっています。すでに脚本が完成していた段階で監督が急死したため、岡本喜八が急遽引き継ぎました。

積極的な演出技法やアニメーションの使用も特徴的で、岡本監督の独自のスタイルが色濃く反映された作品となっています。しかし、試写では期待とは異なる仕上がりにプロデューサーが不満を抱くなど、様々な波紋を呼びました。公開初日から客足が不振であったため、上映期間も短縮される結果となりました。

テレビドラマ化

さらに、1975年3月にはNHK総合テレビジョンによるドラマが放送されました。この作品はギャラクシー賞を受賞し、視聴者から高く評価されました。制作チームには名立たるスタッフやキャストが参加しており、作品の魅力を一層高めています。

まとめ

『江分利満氏の優雅な生活』は、サラリーマンという職業を通じて描かれる昭和30年代の日本社会の一端をユーモアたっぷりに伝える作品です。江分利満の生活の一コマ一コマは、読み進めるごとに当時の人々の心情や文化を浮かび上がらせ、現代にも通じる普遍的なテーマを提供しています。

もう一度検索