江原万里

江原 万里: キリスト教の伝道者としての足跡と思想

江原万里（1890年8月14日 - 1933年8月7日）は、明治から昭和にかけて日本の宗教界に大きな影響を与えた無教会伝道者です。彼は東京帝国大学で教授として教鞭を執り、内村鑑三や新渡戸稲造のもとで学びました。彼の背景には、岡山県北部の津山で生まれたという歴史があり、父は津山藩士、母方の祖父は赤穂藩士という家系に育ちました。

教育の道を歩む中で、江原は第一高等学校に在学中、内村鑑三の講義を受け、キリスト教に深い関心を抱くことになります。その後、東京帝国大学の政治学科に進学し、同じく無教会派の伝道者である内村の弟子たちが集まる柏会に参加。卒業後は1915年に住友総本店に勤務し、ビジネス界でも成功を収める一方、1918年に友人の妹との結婚を果たします。

しかし、彼の人生の方向性は1921年に大きく変化します。住友を辞め、東京帝国大学の経済学部教授となります。ここでの同僚には、のちに名を馳せる南原繁とが存在しました。江原は研究を通じて学問を追求しつつ、信仰にもとづく活動を続けました。

1927年には病気により職を離れ、月刊誌『思想と生活』を創刊します。この雑誌は、彼の信仰と思想の発信の場となり、さらなる伝道活動の拡充を図ることとなります。1929年には病気が治らず、大学教授職を離れることになるのですが、その後も月刊誌を通じて聖書講義を行い、信仰を広める努力を惜しまなかったのです。

江原万里の思想には、武士道を重んじる特異な側面がありました。彼は師の内村鑑三の影響を受けながら、イエス・キリストと日本国家を「己の生命の如く」愛する独自のキリスト教信仰を築き上げました。この思想は、後の彼の講演や著作にも色濃く反映されています。

1933年4月、江原は同じく無教会派の伝道者である矢内原忠雄の支援を受けて鎌倉でキリスト教講話会「鎌倉講演」を開催。講演では、国家的立場を超えた正義について訴え、多くの聴衆に影響を与えました。しかし、そのわずか4カ月後、病気の悪化に伴い、江原は命を落とします。

彼の遺稿『罪と其救ひ』は、後に刊行され、彼の思想と信仰の深さを今に伝えています。また、彼の著作の中には『聖書的現代経済観』や『宗教と国家』などがあり、彼の思想的遺産は現在でも多くの人々に影響を与え続けています。

江原万里の生涯は、彼の信仰と思想がどのように形成され、発展したのかを物語っており、むしろ彼の存在は日本におけるキリスト教伝道の歴史の一部を成すものとなっているのです。

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