江川昇

江川 昇（えがわ のぼる）は、明治末期に生まれ、平成の時代まで生きた日本の政治家です。石川県金沢市で生まれ育ち、地方行政の分野で長きにわたりその手腕を発揮しました。

1909年（明治42年）3月25日に金沢市に生を受けた江川は、地元の石川県農学校（現在の石川県立翠星高等学校）で学び、卒業後は石川県庁に入庁しました。公務員としてのキャリアをスタートさせた後、金沢市役所へと移り、特に助役として15年という長期間にわたり市政の実務に深く携わりました。この助役時代の経験は、その後の市長としての活動に大きな礎となったと考えられます。

1978年、当時の金沢市長であった岡良一氏が病気により辞任したことに伴い、市長選挙が実施されることとなりました。この選挙において江川は、保守から革新まで、当時の主要な全政党（自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、新自由クラブ、社会民主連合）という、極めて異例なほど幅広い政党からの推薦を得て立候補しました。その圧倒的な支持を背景に、対立候補が現れず無投票で初当選を果たし、同年12月1日に金沢市長に就任しました。この広範な支持は、江川の人柄や、長年の助役としての実績に対する信頼の厚さを示すものと言えるでしょう。

市長としての最初の任期満了後、1982年11月21日に行われた市長選挙では、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党からの推薦に加え、日本共産党からの支持も得て再選されました。さらに1986年11月16日の選挙でも、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の推薦を受け、対立候補を破り三選を果たしました。このように、江川は3期にわたり、常に幅広い政党からの支持や推薦を得ながら金沢市政のトップを務めました。

市長在任中の12年間、江川は金沢市の文化振興、都市機能の向上、そして市民生活の質の向上を目指した数多くの重要な政策を推進しました。特に、市民の文化活動や芸術鑑賞の場として欠かせない存在となった金沢市文化ホールの建設や、金沢の伝統工芸の保存・振興を図るための拠点施設である金沢卯辰山工芸工房の設立に尽力しました。また、金沢市の中心市街地であり、商業・業務の中心地である香林坊地区の大規模な再開発事業を主導し、現代的な都市空間へと生まれ変わらせることで、金沢市の活力向上に大きく貢献しました。これらの事業は、今日の金沢市の文化的景観や都市構造を形成する上で重要な役割を果たしています。

3期12年にわたり金沢市長を務めた後、江川は1990年8月14日に、任期満了をもって政界からの引退を表明しました。長年の市政への貢献が認められ、引退後の1992年5月7日には、金沢市から名誉市民の称号が授与されました。これは、金沢市にとって江川がどれほど重要な人物であったかを物語るものです。

その後も穏やかな晩年を過ごし、2013年1月20日、老衰のため満103歳の高齢でその生涯を閉じました。死去に際し、長年の功績と貢献が改めて評価され、従七位から従五位に叙されました。江川昇の生涯は、金沢市の発展とともにあり、その市政への貢献は今もなお語り継がれています。

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