江差追分

江差追分（えさしおいわけ）について

江差追分は、北海道の民謡で、特に渡島半島の日本海沿岸に位置する檜山郡江差町がその発祥地とされています。この民謡は、江戸時代中期以降に形成されたとされ、信濃の追分節に起源を持つことが一般に認識されています。江差追分は北海道指定の無形民俗文化財であり、その文化的価値から「姥神大神宮渡御祭と江差追分」として北海道遺産にも選定されています。また、文部科学省からは中学校の音楽科での鑑賞教材としても指定されています。

歴史的背景

江差追分の起源については、いくつかの説があります。その一つは、信濃国追分宿の馬子唄が北前船の船頭たちによって北海道へ伝わったというものです。また、全国に広がった馬子唄が、後に北海道に入植した越後出身者によって伝えられたという説も存在します。江差追分の基本的な形は、寛永年間に南部国から来た座頭の佐之市によって謙良節と追分が融合されて生まれたとされています。この過程で、浜小屋節や新地節など多くの流派が形成されました。

1884年には、江差町の「小桝のばあさん」として知られる小桝清兵衡の母が、座敷唄を基本にした「二上り」の調子を定型化し、船頭や親方たちに教えました。この歌が正調江差追分の起源となります。1908年には、多くの流派が存在する中で、平野源三郎が追分節の統一を目指し、正調研究会を創立しました。そこで、正調江差追分についての様々な基準が定められ、さらに1911年には現在の7線による独自の曲譜が完成しました。

その後も各流派が独自の色を持ちながら発展し続け、1935年には江差町長が会合を持って追分会派を統合し、江差追分会が誕生しました。このようなプロセスを経て、江差追分は現代の形式に整えられました。

特徴

江差追分の具体的な調べの特徴として、歌の構成は7つの節から成り立っています。1節では深い感情を込めて海と人の思いを描写し、2節では浮かび上がる感情が表現されます。3節は逆に沈む思いを持ち、4節は悲哀の調子へと進むのです。そして5節ではその熱情が爆発します。6節は再び沈む思いを表し、7節で悲哀を持って曲が結ばれます。これらはV2分から2分25秒で詩う予定ですが、現代では2分30秒から2分40秒までかかることが多いです。

江差追分は、基本的には本唄を中心に構成され、約2分50秒かけて歌い上げられます。前唄と後唄もあり、これらは本唄の表現をさらに深める役割を果たします。江差追分の歌い方にはさまざまな技法があり、「出だし」「せつど」「二声あげ」「本すくり」などの技術を駆使するため、日本一難しい民謡とも称されています。

全国大会

1963年には江差追分の振興と継承を目的とした第一回江差追分全国大会が行われました。その後、この大会は毎年9月に開催され、全国の江差追分会支部の選手が日本一を目指して競います。ただし、2020年と2021年には新型コロナウイルスの影響で開催が中止されました。大会では、前唄・後唄は歌わず本唄を歌い競い合う形式が取られています。

江差追分は、ただの民謡にとどまらず、その背後には豊かな歴史や文化が息づいていると言えるでしょう。

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