江戸川漁業被害

江戸川漁業被害

江戸川漁業被害（えどがわぎょぎょうひがい）は、1958年に発生した公害事件で、東京都江戸川区にある本州製紙江戸川工場から放流された黒い排水が原因となっています。この事件は公害問題の重大さを浮き彫りにし、その後の環境保護に関する法律の改正に影響を与えました。

背景

本州製紙江戸川工場は1922年に操業を開始し、当初は約680名の従業員が在籍していました。本工場では、教科書用紙や印刷用紙を生産しており、製造過程において発生する水質汚濁が長年の課題とされていました。特に1958年に新たに導入されたケミカルパルプの製造装置からは、大量の黒褐色の排水が発生するようになり、これが江戸川に放流されることになりました。

黒い排水の問題

新しい製造装置の稼働によって生じた排水は、亜硫酸アンモニウムを用いてリグニンを除去した結果、黒褐色の水が生じていました。工場の経営陣は、その排水を中性で無害だと考えていましたが、漁民たちにはその影響が深刻でした。漁民たちは黒い排水が引き起こす漁業被害を訴え始め、状況は悪化の一途を辿ります。

漁民の抗議と衝突

漁民들은、黒い排水の問題を解決すべく工場に対し抗議行動を行いました。1958年5月24日と6月10には、漁民たちが工場に押しかけ、放流を止めるよう求めました。しかし、警察との衝突が起こり、漁民側には重傷者が出るなど、事態は激化しました。この大規模な抗議活動は、多くのメディアに取り上げられ、社会的な関心を集めることになりました。

法整備への影響

事件を受けて、旧水質二法が改正され、さらなる水質保全に向けた法律が制定される契機となりました。また、下流域の漁業再生事業も進められるようになり、江戸川地域の環境改善が模索されることになりました。これにより、漁業協同組合はその後も活動を続け、地域の再生に向けた取り組みが始まります。

社会的な影響

江戸川漁業被害は、企業の環境への配慮の重要性を再認識させるきっかけとなりました。そして、この事件に基づいたテレビドラマ「官僚たちの夏」も制作されるなど、今なお公害問題を考える上での一つの例として取り上げられています。

本事件は、漁民たちの勇気ある行動が環境への意識を喚起し、法的な保護を呼びかける重要な役割を果たしたことを示しています。これからも、我々はこの事件から学び、持続可能な社会の実現に向けて努力を続ける必要があります。

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