江戸薩摩藩邸の焼討事件

江戸薩摩藩邸の焼討事件

江戸薩摩藩邸の焼討事件は、1868年1月19日に発生した重大な出来事である。この事件は、薩摩藩が庄内藩の屯所を攻撃したことを背景に起こったものであり、幕末の動乱を象徴する瞬間でもあった。数々の政治的陰謀や武力衝突が絡む中、この事件が結果的に戊辰戦争を引き起こす契機となった。

経緯

勤皇派取締りの強化

1863年、庄内藩は江戸幕府から江戸市中の警備を命じられ、攘夷派の取り締まりを強化する体制を整えた。この頃、幕府の幹部は京におり、江戸には市中取締の藩兵しかいない状況だった。

乾退助の密約

1867年、水戸浪士たちが土佐藩邸に匿われた事件が発生し、これに伴い、薩摩藩と土佐藩の間で密約が交わされる。これによって水戸浪士の身柄が土佐藩から薩摩藩へ移管されることになった。

討幕の密勅

1868年、朝廷は薩摩藩と長州藩に対し討幕の密勅を下し、薩摩藩は直ちに行動を開始。これを受け、江戸の薩摩藩邸では、全国から浪士を集め、幕府に対する攻撃を準備する動きが始まった。

拡大する騒乱

薩摩藩邸の浪士たちは、放火や暴行を繰り返しながら幕府の勢力を挑発していった。旧幕府もこれに対抗するため、庄内藩などと共に取締を強化するが、効果的な対策は取れなかった。

討ち入りの決断

状況は次第に悪化し、12月24日、庄内藩の松平老中は強硬な武力行使を決定し、他藩の協力を得て薩摩藩邸への討ち入りを計画した。江戸の薩摩藩邸は包囲され、討入りの準備が進んだ。

焼き討ちの実行

1868年1月25日未明、討ち入りが実行される。庄内藩士が交渉役として薩摩藩邸に訪れたが、引き渡しを拒否され、討ち入りは開始された。薩摩藩邸は爆撃や放火により炎上し、多くの浪士たちが逃亡を試みた。最終的に、薩摩藩邸の使用人や浪士64名、旧幕府側で11名が死亡した。

事件の影響

この事件が伝えられた後、旧幕府内では「薩摩討伐」の声が高まり、戊辰戦争への道が開かれた。薩摩藩は密勅に基づき、土佐藩兵を引き連れて京に向かうことになった。

近年の評価

現在、江戸薩摩藩邸跡には、福澤諭吉が関与して建てた「三田会館」などの施設が存在し、歴史的背景を持つ場所として知られている。

この焼討事件は、日本の歴史における重要な転換点であり、薩摩藩と旧幕府の対立を深め、その後の戊辰戦争へとつながっていくのである。

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