討幕の密勅

討幕の密勅（とうばくのみっちょく）

討幕の密勅とは、江戸時代末期の1867年10月14日に、薩摩藩と長州藩に対して徳川慶喜の討伐を命じる形で発布された秘密の詔書です。この文書は、両藩が新しい政権樹立に向けた動きの中で極めて重要な役割を果たしました。

背景と発布経緯

密勅が出されたのは、薩摩藩の大久保利通が長州藩の広沢真臣と共に、朝廷への官位復旧を受けるために岩倉具視を訪れたことに起因します。10月13日、彼らは官位復帰の沙汰書を受け取ります。翌日の14日には、正親町三条邸において密勅が交付され、正式に両藩の士たちによって署名された請書が提出されました。この請書には西郷隆盛や大久保利通などの名も含まれており、彼らの強力な支持を背景にした出来事であることが見て取れます。

この密勅と同時に、幕府を助けていた会津藩と桑名藩に対する誅戮命令が出され、それにより一気に政局は動き始めました。

形式と法的問題

討幕の密勅は、律令制が崩壊した時代において、正式な詔書としての手続きが踏まれていなかった点が注目されます。本来、天皇が詔書を発布する際には、特定の手続きが必要とされます。この手続きには、中務省の内記が草案を作成し、責任者の署名を経て、最終的に天皇の御璽が押されることが求められます。しかし、密勅はこうした正式な手続きを欠き、その結果、厳密には詔書とは見なされませんでした。また、密勅は佐幕派の摂政である二条斉敬を避ける形で作成されており、政治的背景も大きな要素として影響しています。

このような状況から、密勅は「詔書」ではなく「密勅」と呼ばれることが多く、その目的が彼らにとって非常に不明確であったため、制度的な不備や疑問が生じました。

密勅の評価と影響

密勅の発布によって薩摩藩と長州藩は結束を強め、進撃の大義名分を持つことができました。しかし、その後すぐに徳川慶喜が大政奉還を表明し、朝廷に受理されることで密勅の意義は大幅に揺らぎました。そのため、討幕の実行は延期されることとなります。この歴史的な動きは、江戸時代の終焉を告げるものであり、結果的に明治維新へと繋がっていく重要な過程となりました。

薩摩と長州の藩士たちは、密勅を受け取ったことにより大きな動機を持ち、変革期を迎える日本において新しい政治体制を確立しようとしました。密勅の存在は、権力を追求するための手段として、また変革を求める士族たちの連携の象徴とも考えられ、その影響は後の日本の歴史においても大きな意味を持ち続けています。

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