江藤茂博

江藤 茂博（えとう しげひろ）氏は、1955年に長崎県長崎市で生まれた日本の人文科学者です。文芸、映像、メディア論を専門分野とし、現在は二松學舎大学文学部の教授を務めています。2019年には同大学の学長に就任し、2023年3月までその重責を担いました。

長崎で育った江藤氏は、幼少期から読書、特に漫画に深く親しみました。町の小さな貸本屋や週刊誌で様々な作品を読み漁り、中でも石森章太郎氏の『サイボーグ009』は当時の小学生にとって特別な楽しみでした。中学3年生の時、自身が通っていた学習塾でそのまま教師のアルバイトを経験。これが人生で初めての仕事であり、教育者としての出発点となりました。

高校卒業後、1974年に上京し、練馬区にある武蔵大学人文学部社会学科で学びました。大学卒業後の1980年代には、池袋の立教大学大学院文学研究科に進学し、さらに研究を深めます。その後、十文字学園女子短期大学の専任講師に着任し、1996年には同短期大学の助教授となりました。この時期には、予備校講師としても活動しており、大学入試の解答法について全国各地で指導した経験も持っています。また、予備校講師としての活動と並行して、国語の大学受験参考書を複数出版しています。

1996年には、学習参考書以外で初めての単著となる『映像批評の方法』（彩流社）を刊行し、研究者としての道を本格的に歩み始めます。1998年には河南省南陽市で日本酒に関する仕事に関わる機会があり、これが江藤氏にとって最初の中国との繋がりとなりました。翌年秋から半年間は、アメリカ合衆国のイリノイ大学で客員研究員として滞在し、国際的な視野を広げました。帰国後、十文字学園女子大学社会情報学部教授を経て、2003年からは二松学舎大学文学部国文学科の教授に着任しました。

二松学舎大学では、教授として教鞭をとる傍ら、文学部長、文学研究科長、理事といった要職を歴任しました。そして2019年、同大学の学長に就任し、大学運営のトップとして指揮を執りました。学長退任後も、文学部教授として教育・研究活動を続けています。また、二松学舎大学で文学博士の学位を取得しています。さらに、浙江工商大学日本語言学院の客員教授や、私立高校の理事なども務めた経験があります。

研究者、そして教育者としての江藤氏の活動は多岐にわたります。専門である文芸、映像、メディア論を中心に、サブカルチャーやメディア文化に関する著作を多数発表しています。代表的な著書として、『「時をかける少女」たち』（彩流社、2001年）、『オタク文化と蔓延する「ニセモノ」ビジネス』（戎光祥出版、2008年）などがあります。また、横溝正史の研究書シリーズの編集や、かつての少年少女小説を復刻する「パール文庫」の監修も手掛け、幅広い分野に貢献しています。大学紀要などに発表された論考では、芥川龍之介をはじめとする日本近代文学に関する研究も多く見られます。このように、教育、研究、執筆、編集、監修と、人文科学者として多方面で精力的な活動を展開しています。

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