池ノ上克

池ノ上克（いけのうえ つよむ）氏は、1946年（昭和21年）1月21日に生まれた日本の医学者・医師です。特に周産期医学の分野で顕著な功績を上げています。

生い立ちと学歴

鹿児島県の県庁所在地である鹿児島市に生を受けました。高校は長崎県立長崎東高等学校で学び、1964年に卒業しています。その後、鹿児島大学医学部へ進学し、1970年に医学士号を取得しています。

医師としてのキャリア

大学卒業後、医師としての第一歩を鹿児島市立病院で踏み出し、1972年から産婦人科医員として臨床に従事しました。その後、さらに専門性を深めるため、海を渡り海外での研鑽を積みます。具体的には、南カリフォルニア大学およびカリフォルニア大学アーバイン校の産婦人科で研究・臨床活動に参加しました。帰国後、1982年には日本大学より医学博士号を授与されています。1990年には、かつて勤務した鹿児島市立病院の産婦人科部長に就任し、地域医療の現場を牽引しました。

宮崎での貢献と大学要職

1991年、宮崎医科大学産婦人科の教授に招聘され、活躍の場を宮崎に移します。ここでは教育・研究に加え、地域医療体制の構築にも深く関わることになります。特に彼の名前が広く知られることになったのは、周産期医療における取り組みです。宮崎医科大学在任中、高リスクな妊娠・出産に対応できる医療提供体制の強化に尽力しました。この精力的な活動が実を結び、1994年時点で全国ワーストという厳しい状況にあった宮崎県の周産期死亡率を大幅に改善させることに成功します。この改革の成果は目覚ましく、わずか5年後には同県の周産期死亡率が全国トップクラスの水準にまで向上するという、劇的な変化をもたらしました。

2003年には宮崎医科大学が宮崎大学と統合されたことに伴い、宮崎大学医学部附属病院の副病院長を務めることになりました。その後も大学の中枢で要職を歴任し、2007年には宮崎大学の医学部長に就任。さらに2010年からは医学部附属病院長として、大学病院の運営を担いました。2014年に宮崎大学を定年退職し、長年の功績を称えられ名誉教授の称号を授与されています。

学長としてのリーダーシップ

大学を一度退いた後も、その手腕への期待は高く、2015年10月には宮崎大学の学長に就任し、再び大学運営のトップとして指揮を執りました。学長として大学の発展に貢献した後、2021年にその任期を終えています。

現在の活動

宮崎大学学長を退任後も、医学界および教育界での活動を続けています。2024年からは、九州医療科学大学の学長として、新たな立場で人材育成と大学運営に取り組んでいます。

学会および社会貢献

池ノ上氏は、周産期医学の発展と普及にも積極的に貢献しており、日本周産期・新生児医学会副理事長や、日本母子衛生学会理事長、日本産科婦人科学会代議員などの重要な役職を歴任しています。また、宮崎県の地域医療支援機構代表者会議議長を務めるなど、地域の医療体制構築にも深く関与してきました。

主な著作

専門分野に関する著書や共著も多く発表しており、周産期医学の知識普及に貢献しています。

『周産期管理』（メディカ出版、2009年）
『院内助産システムガイドブック 産科医と助産師の連携・協働の実際』（医歯薬出版株式会社、2010年、共著）
* 『みえる生命誕生―受胎・妊娠・出産』（南江堂、2013年、共著）

池ノ上克氏は、医師、医学者、教育者として、特に周産期医療の分野において多大な貢献を果たし、現在もその経験と知見を活かして活動を続けています。

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