池坊専永

池坊専永：伝統と革新を繋ぐ華道家

池坊専永氏は、1933年、京都で華道家元池坊44世、池坊専威の長男として誕生しました。華麗なる家系の出身でありながら、専永氏は自身の才能と努力で、伝統を受け継ぎながら現代に合った華道のあり方を模索し、確立した稀有な存在です。

父・専威の急逝により、幼いながら家元を継承することとなった専永氏。1945年には京都の青蓮院で得度し、比叡山中学校へ入学後、慈照院で僧侶としての修行を積むなど、厳格な環境の中で育ちました。しかし、その経験は専永氏の精神的な深みと、華道に対する独特の感性を育む土壌となったと言えるでしょう。

学業では同志社大学文学部文化学科を卒業。その後は、華道家としての道を歩み始めます。1962年には徳力富治郎氏とともに海外活動を開始。伝統的ないけばなを世界に紹介する先駆者としての役割を果たしました。国内でも、1971年には東京銀座松坂屋で初の個展を開催し、華道界に新たな風を吹き込みました。

専永氏の活動は多岐に渡ります。個展や国内外の普及活動はもちろん、執筆活動、講演会などを通して、華道の魅力を幅広く発信。ネスカフェのCM出演など、現代的な媒体も活用して華道を広く世に知らしめる努力を惜しみませんでした。1985年の国際科学技術博覧会では、舞台用の超大作「いけばなときものの交響詩」を制作するなど、スケールの大きな作品にも挑戦しています。

数々の栄誉にも輝いています。1971年には紺綬褒章を受章、ブラジルからはオールデン・アカデミコ・デ・サンフランシスコ章を受章するなど、国際的にも高い評価を受けています。1995年には南十字星勲章（ブラジル）、2006年には旭日中綬章を受章（生け花界では初の受章）。さらに、2010年には京都市文化功労者、2013年には京都府文化賞特別功労賞を受賞するなど、その功績は高く評価されています。

専永氏は、単なる伝統の継承者ではなく、時代の変化に対応し、新たな表現を模索し続ける創造的な華道家です。その功績は、数々の著書や監修作品にも表れています。

主な著書

『池坊いけばな』
『池坊 いけばなグラフィック』
『暮しのいけばな』
『池坊 オールカラーいけばな全書』
『いけばな池坊 基礎から創作へ』
『お花に強くなる180の知恵 先生が教えてくれないいけばな上達法』
『愛のいけばな作法 生き方の知恵を教えるいけばな入門』
『池坊専永愛を生ける ふり返られる女性になるために』
* その他多数

これらの著書は、初心者から上級者まで、幅広い層に支持され、いけばなの普及に大きく貢献しました。さらに、監修作品も多く手がけ、華道界の発展に尽力しています。

池坊専永氏は、伝統と革新を融合させた独自の境地を開拓し、現代のいけばなを牽引する存在として、その名を残しました。その功績は、今後も華道界に大きな影響を与え続けるでしょう。

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