池田裁定

池田裁定（いけださいてい）

池田裁定とは、1964年11月9日に行われた自由民主党の総裁選挙の結果、現職の池田勇人が佐藤栄作を次期総裁に指名した出来事を指します。これは日本の政界において重要な転機となりました。

背景

池田勇人総裁は、同年の自由民主党の総裁選挙において再選を果たしましたが、健康状態に関する深刻な問題を抱えていました。彼は長期間にわたり喉の痛みを訴え、最終的な検査で喉頭がんと診断されました。しかし、当時は患者にがんの告知をしないことが一般的だったため、池田自身には病状が伝えられませんでした。

この年には国際通貨基金（IMF）東京総会や東京オリンピックといった重要な行事が迫っていたことから、自民党の幹部たちは池田の健康状態が影響を及ぼさぬよう、秘匿に努めました。結果、池田は東京オリンピック終了まで国のトップとして活動することとなりました。

決定の過程

東京オリンピックの閉幕を迎えた後、池田は国立がんセンターに入院していましたが、その間に後任選びの準備が密かに始まりました。後に、池田は首相を辞任する意向を示し、病床で後継者を決定するための環境を整えました。医師団による健康状態の説明が行われた後、彼は進退について前尾繁三郎や大平正芳に相談し、自らの進退を委ねることにしたのです。

10月25日、池田は退陣の意向を政府の幹部に伝えるとともに、記者会見は行わず、声明文を通じてその旨を発表させました。

後継者の指名

新たな総裁に名乗りを上げたのは佐藤栄作、河野一郎、藤山愛一郎の3人でした。その日の午前、川島副総裁と三木幹事長が池田を訪れ、党内の大勢が佐藤支持であることを伝えると、池田は「佐藤君が後継者として妥当だ」と述べ、あらかじめ用意されていた裁定文に自身の手で佐藤栄作の名前を書き入れました。この決定は、自民党両院議員総会で正式に了承されました。

新体制の始まり

同日の臨時国会において、池田内閣は総辞職し、佐藤栄作が新たな内閣総理大臣として選ばれました。この流れにより、1964年12月1日に開催された自民党臨時党大会で佐藤が第5代総裁に選ばれ、新しいリーダーシップのもとで政権が始動し、佐藤内閣が発足しました。

総評

池田裁定は日本の政治史において重要な出来事であり、池田勇人が健康問題を抱えながらも次期リーダーを見越した決定を下したことが、後の政治情勢に大きな影響を与えました。自民党の強固な支配体制とその中でのリーダーシップ交代の仕組みを端的に示す事例として、今なお多くの議論の対象となっています。

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