池西言水

池西言水（いけにし ごんすい）

池西言水は、慶安3年（1650年）に生まれ、享保7年（1722年）に没した江戸時代初期の俳人です。本名を池西則好といい、八郎兵衛という通称や、兼志、紫藤軒、洛下童、鳳下堂といった別号も持っていました。松尾芭蕉と同時代に活躍し、「木枯の言水」として知られています。

生涯

言水は大和国奈良で生まれました。曽祖父は奈良の大年寄を務めた千貫屋久兵衛であり、父も俳諧を嗜んでいたと伝えられています。言水自身も16歳で出家し、俳諧に専念するようになったと言われています。

江戸に出た時期ははっきりしていませんが、延宝年間には大名俳人の内藤風虎のサロンで才能を認められるようになりました。延宝6年（1678年）には、最初の撰集である『江戸新道』を編集しました。その後も、『江戸蛇之鮓』『江戸弁慶』『東日記』などを編集し、岸本調和、椎本才麿といった俳人たちや、松尾芭蕉一派と交流を深めました。

天和2年（1682年）3月には京都に移り、『後様姿』を出版した後、北越、奥羽を旅しました。天和4年（1684年）までには、西国、九州、出羽・佐渡への3度の地方行脚を行っています。貞享4年（1687年）には、伊藤信徳、北村湖春、斎藤如泉らとともに『三月物』を編集しました。また、但馬豊岡藩主の京極高住とも交流がありました。

元禄3年（1690年）には『都曲』を編集する一方で、当時流行し始めた前句付や笠付などの雑俳にも取り組みました。

言水の死後には、追善句集として『海音集』や『其木がらし』が編纂されました。

代表的な句

菜の花や淀も桂も忘れ水
高根より礫うち見ん夏の湖
凩の果てはありけり海の音

特に「凩の果てはありけり海の音」の句は有名で、この句にちなんで、夏目漱石や芥川龍之介も凩と海を題材にした句を詠んでいます。彼の句は、自然の風景を鮮やかに描写するだけでなく、その奥にある情感や人生観を表現していると言えるでしょう。

参考文献

宇城由文『池西言水の研究』和泉書院、2003年。ISBN 978-4757601932。

池西言水は、芭蕉と同時代に生きた俳人として、江戸俳壇に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、読み継がれています。

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