沈有容

沈有容（しん ゆうよう）は、明代後期の武将で、字は士弘、号は寧海と称しました。1557年に寧国府宣城県（現在の安徽省宣城市）で生まれ、1628年に亡くなっています。彼は兵略を好み、万暦7年（1579年）の武挙に合格して軍人の道を歩み始めました。

沈有容は、その軍事的な才能から頭角を現し、福建巡撫の金学曾に重用されるようになりました。福建沿岸の防衛を任され、特に重要な拠点であった浯嶼（ごしょ、現在の福建省漳州市竜海区港尾鎮）と銅山（どうざん、現在の福建省漳州市東山県銅陵鎮）の守備を担当しました。

万暦30年（1602年）、当時「東番」と呼ばれていた台湾を根拠地とする倭寇が海上を荒らし回っていました。これに対し、沈有容は21隻の軍船を率いて出撃し、倭寇を打ち破るという大きな戦果を挙げました。さらに、彼は大員（現在の台湾南部の地名）に20日間滞在し、このとき同行した陳第が、台湾の原住民の風俗や文化を記録した『東番記』を著しています。この記録は、当時の台湾の様子を知る上で貴重な資料となっています。

1604年、オランダ人のウェイブラント・ファン・ワルベイクが澎湖に侵入し、現在の馬公に駐留して明朝との交易を求めました。この事態に対し、明朝廷は沈有容を派遣してオランダ勢力の排除を命じました。同年11月18日、沈有容は澎湖に到着し、ワルベイクと交渉しました。その際、沈有容は明朝が澎湖での貿易を許可しないこと、さらに福建当局が派兵準備を進めていることを伝え、ワルベイクを退去させることに成功しました。この功績を称え、明朝は沈有容がオランダ勢力を退けたことを記念する石碑を建立しました。この石碑には、「沈有容諭退紅毛番韋麻郎等」と刻まれており、沈有容が紅毛（オランダ人）のワルベイクを退かせたことを記しています。

この石碑は、民国8年（1919年）に発見され、現在は澎湖馬公大天后宮の清風閣に保存されています。沈有容の事績は、明代の海防における重要な一場面を示すものであり、彼の軍事的な手腕と外交交渉能力を今に伝えています。

参考文献

『明史』列伝第一百五十八
張燮『東西洋考』巻八「税璫考」

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