沈栄津

沈栄津（シェン・ロンチン）

沈栄津（しん えいしん、シェン・ロンチン、繁体字中国語: 沈榮津、1951年7月27日 - ）は、台湾（中華民国）出身の経済官僚、政治家です。行政院副院長（副首相）や経済部長などの要職を歴任しました。

人物

1951年、台南県の農家の家庭に生まれました。両親が読み書きができなかったため、兄が自分の名から一字をとり、五行思想の辞典から水属性の「津」を選んで命名したとされています。実直で勤勉な人柄で、現場主義を貫く人物として知られています。

学歴

台南県立新営国民小学（1963年卒業）
省立台南高級工業職業学校（現・台南高工）
省立台北工業専科学校（現・国立台北科技大学）
国立台北科技大学 商業自動化・管理 碩士（修士）

経歴

台南工校卒業後は、医療機関で電気工事に従事しました。その後、昼間は台北工専の実験室で学びながら、夜間は仕事をするという生活を送ります。台北工専在学中は、実験室と屋上の間にある踊り場に住み込み、生活費を節約していました。農家出身であることから、体を動かすことをいとわず、経済部工業局副局長時代には、1日に15社もの企業を視察し、「台湾牛」と称えられました。経済部が管轄する元国有企業である中国鋼鉄の董事（取締役）や、国家中山科学研究院の董事なども歴任しています。

中華民国経済部での役職

沈栄津は、長年にわたり経済部の要職を歴任しました。

経済部工業局
科長、副組長、組長（1993年3月 - 2004年8月）
副局長（2004年8月 - 2006年3月）
副局長（2006年9月 - 2008年7月）
局長（2012年6月 - 2014年2月）
経済部加工出口区管理処
処長（2010年5月 - 2012年6月）
経済部
主任秘書（2006年3月 - 2006年9月）
参事兼中部弁公室主任（2008年7月 - 2010年5月）
常務次長（2014年2月 - 2016年5月）
政務次長（2016年5月 - 2017年9月）
経済部長
2017年8月15日に発生した大規模停電事故（815全台大停電）を受け、引責辞任した李世光の後任として経済部長に就任。頼清徳内閣でも引き続き経済部長を務めました。蔡英文総統から電力供給の安定化を求められた際には、通常1ヶ月かかるとされる問題を1週間で解決し、「栄津の辞書に『放棄』の文字はない」と言わしめました。

沈栄津は、経済部で数々の役職を歴任し、その手腕を発揮しました。特に、経済部長時代には、台湾の産業界からの信頼が厚く、そのリーダーシップは高く評価されています。

COVID-19流行への対応

2020年初頭に始まったCOVID-19の流行では、行政院副院長として、マスクの国内増産を主導し、台湾国内のマスク不足の早期解消に大きく貢献しました。

旧正月の連休中にマスク不足が懸念された際には、マスクメーカーに即座に増産体制を指示し、工作機械メーカーを招集して製造装置の確保を行いました。「今日やらなければ明日はない」という強い意志で現場を鼓舞し、生産能力を1日188万枚から1000万枚へと大幅に増加させました。通常数ヶ月を要する生産ラインの増設をわずか25日で完了させるという偉業を成し遂げ、その活躍は蔡英文総統からも称賛されました。製造装置は政府予算で各メーカーに分配され、生産量の一定割合を政府が買い上げることで必要量が確保されました。

また、デマによるトイレットペーパーの買い占めを懸念し、自らコンビニやスーパーを訪れて在庫状況を発信するなど、国民の不安解消にも努めました。1日12時間以上働くこともあり、不眠不休で職務にあたっていたとも言われています。

国民からは、「経済部最強のおじさん」「プロ級のおじさん」などと親しみを込めて呼ばれ、その功績は広く称えられました。この間、経済部のFacebookには、沈栄津への感謝や賛意のコメントが多数寄せられました。

著作

『我國產業電子化推動策略之研究』（2001年）
『資訊産業供應鏈電子化推動策略之研究』（2005年、陳銘崑との共著）

沈栄津は、台湾の経済発展に大きく貢献した人物であり、その功績は長く語り継がれることでしょう。

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