沖宿町

沖宿町（おきじゅくまち）は、茨城県土浦市の東部に位置する町です。土浦市内の五中地区、別名上大津地区に含まれ、郵便番号は300-0023となっています。この地域では現在、町界町名整理や住居表示に関する整備事業は実施されていません。

地理的には、町の南部は広大な霞ヶ浦に面しており、東側は隣接するかすみがうら市と境を接しています。水辺に近い穏やかな景観が広がっています。

歴史を遡ると、江戸時代より前は新治郡に属する沖宿村として存在していました。中世には荘園の一部であり、大津郷南野荘に含まれていたと伝えられています。江戸時代を通じて、沖宿村は一貫して土浦城主、すなわち土浦藩の所領でした。

近代に入り、町村合併が進められる中で、1888年（明治22年）には田村、手野村、白鳥村、菅谷村、神立村と合併し、新たに上大津村が誕生しました。これにより、沖宿は上大津村の大字沖宿となりました。その後、昭和の合併期である1954年（昭和29年）に上大津村が土浦市に編入されたことで、土浦市沖宿町という現在の名称になりました。

高度経済成長期を経て、1970年代（昭和40年代）頃からは、国の進めた減反政策が地域産業に大きな変化をもたらしました。かつて稲作が行われていた多くの田んぼで、新たに蓮根の栽培が始められたのです。沖宿および近隣の田村、手野といった地域で蓮根栽培が活発に行われるようになり、その結果、土浦市は日本国内でも有数の、そして日本一を誇る蓮根の産地へと発展しました。

さらに、1990年（平成2年）代には、町の北部台地におけるニュータウン開発計画がスタートしました。この開発は順調に進み、1998年（平成10年）には沖宿町の一部から分離する形で、「おおつ野」という新しい町名が誕生しました。このように、近現代を通じて沖宿町は産業構造の変化や都市開発による影響を受けてきました。

比較的新しい動きとしては、2005年（平成17年）4月に、町内に茨城県霞ケ浦環境科学センターが開設されたことが挙げられます。この施設は、霞ヶ浦の水質浄化を目指した研究・啓発活動の拠点となっています。

沖宿町には、歴史に名を残す人物やそれにまつわる伝承も存在します。安村江痴は、江戸時代から明治期にかけてこの地に生きた人物で、土浦藩の藩医を務めました。晩年には沖宿に自らの診療所を開き、地域医療に貢献しました。彼の墓所は土浦市の指定史跡となっています。また、常陸小田氏の9代目当主とされる小田治朝も、沖宿町にゆかりがあります。伝説によれば、彼の菩提寺である海蔵寺を当地に建立したとされています。小田治朝の墓所も町内にあり、安村江痴の墓所と同様に市の指定史跡です。

町内にある鹿島神社には、源義経にまつわる興味深い民話が語り継がれています。源義経が兄の頼朝に追われ、奥州へと落ち延びる途中でこの地に立ち寄り、鹿島神社にかくまわれたとされています。そのお礼として、義経が愛用していたとされる「青葉の笛」を神社に奉納したという伝説です。

町内にはいくつかの主要な寺社があります。鹿島神社は鎌倉時代の創建と伝えられ、例年10月には盛大な大祭が行われます。その他にも、海蔵寺、沖宿観音堂、三峯神社などが見られます。

また、町内にはいくつかの指定文化財が存在します。海蔵寺には、茨城県指定の文化財である「大般若波羅密多経」と「木造阿弥陀如来坐像」が所蔵されています。先に述べた小田治朝の墓と安村江痴の墓は、それぞれ土浦市の指定史跡となっています。

公共・教育施設としては、茨城県霞ケ浦環境科学センターのほか、土浦市立上大津東小学校や沖宿郵便局があります。

交通網としては、茨城県道118号石岡田伏土浦線や、都市計画道路である田村沖宿線などが町内を通っています。

町の世帯数や人口については、定期的に集計が行われています（※本記事作成時点の具体的な数値は割愛します）。小学校および中学校の学区についても、土浦市によって指定されています。

このように、沖宿町は歴史的な背景を持ちながら、近代には新たな産業（蓮根栽培）が発展し、ニュータウン開発や環境科学拠点の設置といった変化を経てきた地域です。霞ヶ浦の豊かな自然に恵まれつつ、歴史的史跡や伝承も息づいており、多様な側面を持つ町と言えるでしょう。

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