沖村正康

沖村正康：卓越した鋳造技術と彫刻への情熱

沖村正康（1940年7月13日 - 2012年9月4日）は、日本の彫刻界に重要な足跡を残した彫刻家、そして鋳造家です。東京都出身の彼は、東京藝術大学大学院で彫刻を専攻。高田博厚という巨匠の彫刻論を学び、卒業と同時に高田のアトリエを継承するという、大きな転機を迎えました。以降、高田を師として、その芸術精神を受け継ぎながら独自の道を歩み始めます。

師事期間中は、高田博厚の代表作である「ガンジー立像」制作にも携わるなど、実践的な経験を積みました。そして、独学でロストワックス法という高度な鋳造技術を習得。この技術は、溶けた金属を精密な型に流し込むことで、複雑な形状の彫刻を制作できる高度な技法です。沖村はこの技術を駆使し、自身の作品制作だけでなく、他の彫刻家の作品制作にも貢献することになります。

1973年には、埼玉県三郷市に有限会社三郷工房を設立。以降、自らの工房で鋳造技術を生かしながら、精力的に作品制作に取り組みました。その技術は高く評価され、高田博厚をはじめ、文化勲章受章者である澤田政廣など、多くの著名な彫刻家の作品制作にも関わることになります。特に晩年の高田博厚からは、作品をブロンズ化する作業をすべて任されるほど、その技量と信頼は厚いものでした。

沖村は、自身の作品制作にも情熱を注ぎました。その作品は、数々の公共施設に設置され、人々の目に触れる機会を得ています。埼玉県東松山市立図書館や岩手県一関市迎橋などに設置された作品群は、彼の芸術的才能と技術力の高さを示す、重要な遺産と言えるでしょう。

制作活動以外にも、沖村は「一元会」というグループにも所属し、長年にわたって展覧会に参加。このグループは、高田博厚を中心に結成され、日本の現代彫刻を牽引する存在でした。沖村は中心メンバーとして活動し、日本の彫刻界の発展に貢献しました。

個展も精力的に開催し、各地でその作品を発表しました。ギャラリーたんぽぽ、シロタ画廊、煥乎堂、第一画廊など、様々な場所で個展を開き、多くの人々に彼の作品の魅力を伝えました。晩年は、難病を患っていた妻の介護を15年間続ける傍ら、自身も病気と闘いながら創作活動を続けました。

2012年、永眠。しかし、彼の残した作品や技術、そして弟子たちへの影響は、日本の彫刻界に長く残り続けるでしょう。没後も、ギャラリー青羅で遺作展が開かれるなど、彼の作品は今なお多くの人々を魅了し続けています。彼の功績は、単なる彫刻家や鋳造家としてではなく、日本の美術文化に貢献した重要な人物として、高く評価されるべきでしょう。

沖村正康の作品集は複数出版されており、彼の作品や生涯を詳しく知りたい方は、それらを参考にすると良いでしょう。彼の作品は、技術と芸術性の高い融合を示すものとして、今後も日本の彫刻史において重要な位置を占め続けることでしょう。

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