沖縄県立宮古農林高等学校

沖縄県立宮古農林高等学校は、かつて沖縄県宮古島市に位置していた公立の農業専門高校です。地域の第一次産業を支える人材育成に貢献しましたが、平成22年（2010年）3月をもってその歴史に幕を閉じました。

学校の始まりは、戦後間もない昭和21年（1946年）4月1日、宮古群島政府立宮古中学校に農科が併設されたことによります。翌昭和22年（1947年）4月1日には、宮古群島政府立宮古高等学校の農林部として独立した形となり、さらに学制改革を経て昭和23年（1948年）4月1日には宮古農林高等学校と改称されました。昭和27年（1952年）4月1日には琉球政府に移管され、琉球政府立宮古農林高等学校となり、この時期から男女共学が導入されています。本土復帰に伴う昭和47年（1972年）5月15日には、沖縄県立宮古農林高等学校として新たな歩みを進めました。

閉校時までに設置されていた学科は多岐にわたり、地域農業の多様なニーズに応える専門教育が行われていました。主な学科としては、施設園芸学科、農業工学科、畜産学科、生活科学科、生物生産科、環境工学科、生活福祉科などがありました。

特に環境工学科環境班の活動は特筆されます。彼らの研究「宮古の水を守れ～土壌蓄積リンで環境に優しい有機肥料作り～」は、国内外で高い評価を受けました。平成16年（2004年）には日本河川協会による第3回青少年研究活動賞を受賞したほか、スウェーデンのストックホルムで開催された第8回ストックホルム青少年水大賞において、日本人として初めての受賞という快挙を達成しました。このストックホルム青少年水大賞は「水のノーベル賞」とも称され、世界の若者を対象に、水の保全や賢明な水資源管理への取り組みを支援することを目的としています。宮古島は河川がなく、生活用水の全てを地下水に依存している地理的特性があります。この研究は、化学肥料による地下水汚染という深刻な課題に対し、土壌に蓄積したリンを活用した環境負荷の少ない有機肥料を開発・普及させることで、島の大切な水源である地下水を守ろうとする実践的な取り組みが高く評価されたものです。

学校の閉校は、沖縄県教育委員会が平成14年度に策定した県立高校編成整備計画に基づくものでした。この計画では、宮古農林高等学校と沖縄県立翔南高等学校を統合し、平成19年（2007年）4月に新たな「沖縄県立宮古総合実業高等学校（仮称）」を開校することが定められていました。しかし、計画策定から3年が経過した平成18年（2006年）6月1日に初めて地域住民向けの説明会が開催されるなど、地域との対話が遅れたことに対し、住民からは「長期間説明会が開かれず地域住民を軽視している」「両校は宮古の第一次産業の人材育成に寄与しており、統合すると人材育成に支障が出る」といった反対意見が相次ぎました。これを受け、県教育庁および県教育委員会は翌日の会合で、地域住民の十分な理解と賛同が得られていないと判断し、新高校の開校を一年延期することを決定しました。

最終的に、平成20年（2008年）4月1日、計画通りに宮古農林高等学校と翔南高等学校は統合され、沖縄県立宮古総合実業高等学校が設立されました。宮古農林高等学校は、統合後も在校生が卒業するまで学校機能を継続し、平成22年（2010年）3月2日に閉校式を挙行し、その歴史に静かに幕を閉じました。卒業生は地域の農業や関連産業において多大な貢献を果たしており、その教育理念と功績は新設された宮古総合実業高等学校に引き継がれています。

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