没薬

没薬（もつやく）についての詳細

概要

没薬とは、ミルラノキ属の樹木から分泌される、赤褐色の植物性ゴム樹脂のことです。主に香料として利用されており、また薬効もあることから古代から人々に重宝されてきました。日本語では「ミルラ」とも呼ばれ、これが没薬の和名の由来とされています。

名前の由来

「ミルラ」とはヘブライ語の「mor」やアラビア語の「murr」に由来し、「苦味」を意味します。この名称は、植物の特性を反映したものであり、またその香りの特徴とも関連しています。さらに、ギリシア神話にも重要なストーリーがあります。

ギリシア神話のストーリー

ギリシア神話によると、キプロス王の娘ミュラーは父に恋をしてしまい、その結果道を外れた恋に悩むことになります。彼女はアラビアのサバア王国へ追放され、神々の情けにより木に変えられます。ここで流れた涙が香り高い樹液となり、これが後の没薬となるのです。神話的な物語は、没薬の神秘的な性質を象徴しているといえます。

分布と起源

没薬樹はエジプトやオマーン、イエメンなど乾燥した地域に広く分布しており、エチオピア北部や南アフリカに自生しています。その起源については、アフリカ起源が確実視されつつも、エジプトでの古い使用例があるためにエジプト起源も考えられています。

歴史的な利用

没薬は古代から香料や薬草として幅広く利用されてきました。香として焚かれることが多く、特に古代エジプトではキフィという香の調合に使われていました。また、ミイラ作りにも利用され、その防腐効果から亡骸を守る役割を果たしました。面白いことに、ミイラという言葉自体がミルラに由来するとも言われています。

聖書にも没薬の記載が頻繁に見られます。出エジプト記では聖所を清めるための香に使用されたことが記されていますし、イエス・キリストの誕生時に贈り物として捧げられたのも特徴的です。イエスの埋葬においても、香料の一部として没薬が用いられる様子が描かれています。

現代における利用

近代以降は主に男性用香水や化粧品の香料として利用されており、粉砕した没薬を蒸留して得られるエッセンシャルオイルや抽出物がその成分として使われることが多いです。さらに、歯磨き粉やガムにも添加されることがあります。

その他の情報

興味深いことに、バラの香りの評価において「ミルラ香」という名称が使われることがあります。そのため、没薬は香料業界でも一つの重要な位置を占めていると言えるでしょう。

結論

没薬はその独特な香りと多様な利用法によって、古代から現代にかけて私たちの生活に影響を与えてきました。古代エジプトの人々からギリシア神話、さらには現代の香水や薬に至るまで、没薬は人類の歴史の中で重要な役割を担ってきたのです。

もう一度検索