サバア王国

サバア王国の歴史

サバア王国（Sab'、アラビア語: سبأ）は、紀元前8世紀末から紀元後まですでに存在した、南アラビアに位置する国家です。その中心地はシルワーフ（現代のマアリブ周辺）であり、この地域は古代における重要な交易拠点として栄えました。

初期の歴史

サバア王国の成立時期は紀元前8世紀頃とされ、その発展は二つの主要な時代に分けられます。最初の時代である「ムカッリブ時代」（紀元前750年頃から紀元前500年頃）は、特にサバアの国が外部からの攻撃を受けつつも、独自の力を築いていった時期です。ここでは、「ムカッリブ」という役職名が君主の称号として使われていました。

次の「マリク時代」（紀元前500年頃から紀元前115年）は、国家が経済的にも軍事的にも強力になり、「マリク」という称号が広く認知されるようになった時期です。この時期、王国は繁栄し、貿易や農業によって豊かさを追求しました。

紀元前8世紀の文献には、サバアに関する記録がいくつか存在し、アッシリア王国との貢納や交易の記録が次々と見つかっています。特にサルゴン2世やセンナケリブの年代記には、サバア王国の存在が明確に記されており、これが王国の存在証明の一部となります。

前期の勢力拡大

初期の王イサァマアル・ワタルやカリバイル・ワタルの下で、サバア王国は周辺国家との戦争を経て勢力を拡大しました。イサァマアルはアウサーン王国と協力し、カタバーン王国を屈服させます。その後、カリバイルは同盟を破り、アウサーンとの激闘を繰り広げました。この時代、サバアは多くの民族を支配下に置き、その影響力は広範囲に及びました。

後期の商業的発展

6世紀に差し掛かると、サバア王国はマイーン王国や新バビロニアとの関係でその強さを再確認します。特に、海上交易に力を入れ、香料を主要な商品として取引しました。サバアでは特に香料貿易によって経済が活性化され、さらにマアリブ・ダムの灌漑農業との相乗効果で発展を遂げます。これらの繁栄から「シバの女王」伝説も誕生しました。

しかし、紀元前2世紀にはプトレマイオス朝の台頭や商業の変化によりサバアは衰退の一途を辿ります。高原部に位置する諸部族との競争が相次ぎ、さらにはしばらく経った後、ヒムヤル王国がその力を増し、サバア王国との同君連合が形成されました。220年ごろになると、サバアはヒムヤル王国に吸収されていきます。

宗教と文化

サバア王国では、宗教が国家の支柱として大きな役割を果たしました。月の神を中心とした信仰が広まり、特にアルマカフという月神を祀る神殿がシルワに存在しました。また、祭りや巡礼も行われ、地域の結束を強化しました。

このように、サバア王国は歴史と文化、そして経済の面で南アラビアにおいて長きにわたり影響を与え続けました。「シベリアの女王」などの伝説はこの地を象徴するものとしてただの神話や伝説に留まらず、多くの人に影響を与える存在となったのです。

サバア王国は長い歴史を経た後、その存在の息吹を感じることができる貴重な地域として、深い歴史を今に伝えています。

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