河 (交響曲)

交響曲『河』（Sinfonia "Il Fiume" para Banda）

交響曲『河』（イタリア語原題：Sinfonia "Il Fiume" para Banda）は、オランダの作曲家ユリアーン・アンドリーセンによって1984年に作曲された吹奏楽のための交響曲です。

概要

この作品は、オランダの音楽著作権管理団体BUMAの基金、オランダ公共放送VARA、そしてケルクラーデで開催される世界音楽コンクール（WMC）という三者からの共同委嘱を受けて誕生しました。具体的には、1985年7月5日から28日にかけて開催された第10回世界音楽コンクールの吹奏楽部門における課題曲として書かれました。

世界初演は作曲翌年の1984年12月9日、オランダ南東部ヴェールトのボスホーフェン体育館にて行われました。この記念すべき演奏を担ったのはトルン聖ミハエル吹奏楽団で、指揮はノルベール・ノジーが務めました。

作品が描いているのは、実在する特定の河川の風景ではありません。むしろ、とめどなく流れゆく人生の歩みや、絶え間なく変化し続ける音楽そのものを「河」という普遍的なイメージに重ね合わせたものです。曲名はイタリア語で付けられており、本来の発音に近い読み方は「イル・フィウーメ」となりますが、日本では慣習的に「イル・フィウム」というカナ表記で広く親しまれています。

楽譜には約19分30秒の演奏時間として記載されており、1984年にはオランダの出版社モレナール（Molenaar N. V.）より出版されました。

構成

本作は、クラシック音楽における交響曲の伝統的な形式に則り、四つの楽章から構成されています。

第1楽章 レント・アレグロ（Lento Allegro）

ゆったりとした速度の「レント」（♩=約76）で始まり、3/4拍子で進みます。その後、決然とした速いテンポの「アレグロ・デチーゾ」（♩=約152）へと移行し、4/4拍子に変化します。ソナタ形式によって構成されており、約6分半を要します。

第2楽章 アダージョ（Adagio）

遅いテンポの「アダージョ」（♩=約66）で奏される楽章です。4/4拍子の静かな音楽が展開されます。バラード風の性格を持ち、演奏時間はおよそ4分です。

第3楽章 スケルツォ（Scherzo）

軽快でユーモラスな「アレグロ・スケルツァンド」（♩.=約144）の速さで進みます。拍子は9/8拍子です。古典的な三部形式のスケルツォとして書かれており、約3分半の比較的短い楽章です。

第4楽章 アレクロ・ヴィヴァーチェ（Allegro Vivace）

再び緩やかな「レント」（3/4拍子）で導入された後、生き生きとした速いテンポの「アレグロ・ヴィヴァーチェ」（♩=約168）へと移ります。3/4拍子のまま、ロンド形式によって構築されています。演奏時間は約5分で、華やかに曲を締めくくります。

ユリアーン・アンドリーセンの交響曲『河』は、その委嘱背景と普遍的なテーマから、吹奏楽の重要なレパートリーとして現在も多くの演奏団体によって取り上げられています。

（参考文献として、稲垣征夫氏によるCD解説『蒼き波の上のバッカス』などがあげられます。）

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