河合由美子

河合 由美子（かわい ゆみこ）は、1968年11月26日に大阪府羽曳野市で生まれた日本の女性映画監督です。

経歴と思想

彼女の人生は、幼少期からの困難と試練に満ちていました。家庭環境においては父親からの虐待に苦しみ、さらに中学時代には同級生からの陰湿かつ暴力的なじめを受け、コンパスで刺されるほどの傷を負う経験をしています。これらの深い心の傷は、その後の人生に暗い影を落としました。

過酷な状況を乗り越えられず、河合氏は摂食障害、アルコール依存症、そして薬物依存症といった深刻な問題を抱えるようになります。特に20代から30代にかけての約10年間は、社会から隔絶された状態となり、風呂にも入らず、ひたすらパソコンに向かうという引きこもりの生活を送りました。この期間、彼女の体重は増加し、100kg近くに達しました。

心身ともに追い詰められた河合氏は、2001年に大量の薬を服用し、自ら命を絶つことを試みます。幸いにも一命を取り留め、精神病院の保護室に強制的に入院することとなりました。病院での治療を経て外出が許されるようになると、彼女は以前にも増して熱心に映画を鑑賞するようになります。この時期の映画との出会いが、その後の彼女の人生の転機となります。

2003年、河合氏はドキュメンタリー映画界の著名な監督である原一男氏と出会います。この出会いがきっかけとなり、彼女は原監督の作品『私をみつめて』（2005年公開）に被写体として出演することになります。これを皮切りに、彼女は映画制作の世界に深く関わっていくこととなります。渡辺文樹監督の『ノモンハン』（2008年）では進行として制作を支え、同監督の『金正日』（2011年）には再び出演者として参加しました。さらに、若松孝二監督の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』（2012年）では助監督を務めるなど、様々な立場で映画制作の現場を経験しました。

特に重要な転換点は、大阪市西成区にある日本最大の寄せ場として知られる釜ヶ崎との出会いです。2004年、釜ヶ崎に住む一人の男性との交流を通じて、彼女はこの街に強い関心を抱くようになります。そして、自らも釜ヶ崎に移り住み、カメラを手にこの街の人々の日常や生活を記録し始めました。この地での生活と撮影は、彼女にとって初の長編監督作品となる『わたしの釜ヶ崎 日本最大のスラムドヤ街をゆく』（2012年）へと結実します。この作品では、自ら監督、撮影、そして出演も兼ね、釜ヶ崎という場所が抱える現実と、そこに生きる人々の姿を率直に描き出しました。この映画は東京と大阪で劇場公開され、大きな反響を呼びました。

現在も河合氏は釜ヶ崎を拠点として生活を続けており、その地での経験が彼女の創作活動の源泉となっています。自身の壮絶な過去の経験と、社会の周縁で生きる人々への共感が、彼女の作品に深みを与えています。

主な作品

私をみつめて（2005年）- 出演
ノモンハン（2008年）- 進行
金正日（2011年）- 出演
11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち（2012年）- 助監督
わたしの釜ヶ崎 日本最大のスラムドヤ街をゆく（2012年）- 監督・撮影・出演

外部リンク

公式サイト
* 河合由美子 (@mykamagasaki) - X（旧Twitter）

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