河童千一夜

河童千一夜

『河童千一夜』は、水木しげるが描いた日本の漫画作品です。この作品は、もともと『漫画アクション』に連載されていた『河童シリーズ』を改題したもので、河童を題材にした短編漫画集となっています。各話で異なる河童が登場し、人間との関わりの中で様々なドラマが展開されます。

作品概要

『河童シリーズ』は、主に火野葦平の『河童曼陀羅』を下敷きにしており、1969年6月から1970年7月にかけて『漫画アクション』（双葉社）で連載されました。連載は月1回程度のペースで、全15回にわたって掲載されました。

最初の単行本は、連載終了後の1970年9月に双葉社から『河童膏』として刊行されました。その後、日本文芸社、講談社、筑摩書房、朝日新聞出版と版を重ねる中で、『河童千一夜』と改題されました。しかし、全話を収録した単行本は存在せず、各版で収録作品が異なっていました。連載第1話の『河童膏』は、多くの短編集に単独で収録されています。

2016年2月には、水木しげる漫画大全集『河童シリーズ[全]』が刊行され、初めて全15話が完全収録されました。

各話あらすじ

各話では、河童と人間との間で繰り広げられる、時にユーモラスで、時にシリアスな物語が展開されます。

河童膏: 打ち身や切り傷に効く膏薬の原料が河童の皿であるという設定で、皿を採取する男たちの姿を描きます。
梅林の宴: 蓮根池の埋め立てを巡り、河童と人間が剣で勝負する異色の物語です。
皿: 皿屋敷のお菊と出会った河童が、お菊のために10枚目の皿を探し出す物語です。
瓢箪: 日照りに困る百姓が、娘と引き換えに河童に田んぼの水を要求される話です。
復讐: 殺された妻の復讐を誓う河童と、復讐対象の娘との間に生まれる複雑な感情を描いた物語です。
小便: 河童が溶けた淵で小便をしてしまった男と、復活した河童の退治に挑む人々の話です。
曲馬団: 曲馬団の女性に恋した河童が、仲間と対立しながらも曲馬団で働く物語です。
花の下の井戸: 人間が河童になるという奇妙な体験を描いた物語です。
詫び証文: 河童の父親を死なせてしまった小僧が、河童たちから詫び証文を書くよう強要される物語です。
蕎麦の花: 異種族間の恋愛を描いた切ない物語です。
河童の手: 人間に手を奪われた河童が、手を返してもらうために試練に耐える物語です。
きゅうり地獄: キュウリを大量に食べた河童が、太ってしまい身動きが取れなくなるというユーモラスな物語です。
徳兵衛と丸子石: 人間と河童が仲良くなったと思いきや、人間の裏切りを描いた物語です。
髪様の壺: 学生が古い壺を発見し、それによって怪奇現象に巻き込まれる物語です。
花子河童: 川で溺れる人を助ける女河童と、その甲羅を狙う人間の物語です。

これらの物語は、水木しげるならではの独特な世界観と、人間や妖怪の本質を捉えた深いテーマが魅力です。河童という存在を通して、人間の欲望や業、そして時には温かい交流を描き出しています。

書籍情報

単行本

『河童千一夜』（ちくま文庫、1993年2月）- 15編中11編を収録
『河童千一夜』（朝日新聞出版、2008年6月）- 15編中14編（『皿』を除く）を収録
『河童シリーズ[全]』（講談社、2016年2月）- 全15話を完全収録

短編集

『幻想世界への旅〈妖怪ワンダーランド3〉』（ちくま文庫）- 『河童膏』のみ収録
『まぼろし旅行記〈妖怪ワンダーランド7〉』（ちくま文庫）- 『徳兵衛と丸子石』のみ収録
『水木しげる妖怪コレクション』（双葉文庫）- 『河童膏』のみ収録
『水木しげる 奇談 貸本・短編名作選 異形の者・吸血鬼』（ホーム社）- 『皿』のみ収録

電子書籍

eBookJapanでは、『梅林の宴』、『瓢箪』、『蕎麦の花』、『河童の手』、『花子河童』の5編と、『河童膏』の元作品『ろくでなし』、『髪様の壺』の元作品『永仁の壷』が購入可能です。

『河童千一夜』は、水木しげるの豊かな想像力と、人間の業や滑稽さを描いた傑作短編集です。ぜひ、この機会に水木しげるの描く河童の世界に触れてみてください。

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