河野義行

河野義行のプロフィールと活動

河野義行（こうの よしゆき、1950年2月3日生まれ）は、日本の著述家であり、鹿児島県に在住しています。彼は、1994年に発生した松本サリン事件の被害者であり、その後、事件に関する報道被害を受けました。現在は、オウム真理教事件やメディア・リテラシーについての講演を行う一方、いくつかの非営利活動団体でも活動しています。特に、特定非営利活動法人リカバリー・サポート・センターの理事を務めるほか、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」（通称のりこえねっと）では共同代表としても知られています。

来歴

河野は愛知県豊橋市で生まれました。1973年に名城大学理工学部を卒業し、山岳写真家である河野齢蔵は彼の妻の祖父にあたります。1994年6月27日、松本サリン事件が発生した際、彼は事件の第一通報者となり、その後、警察から容疑者として疑われる事態に直面しました。長野県警は彼の自宅を捜索し、農薬が発見されたことや、近隣住民による不審な煙を見たとの証言があったため、疑念が深まりました。しかし、その証言が虚偽であることが後に明らかになり、農薬からサリンを合成することができないと判明しました。

この時、地元メディアや全国紙は河野を犯人であると報じ、彼とその家族は何度も長野県松本警察署から取り調べを受けましたが、実際の証拠は発見されず、逮捕されることはありませんでした。その後、オウム真理教施設の周辺での発見や、1995年の地下鉄サリン事件を契機に、松本サリン事件がオウム真理教によるものであったことが判明し、河野への疑いは完全に解消されました。事件の捜査に関わった国家公安委員会委員長であった野中広務は、河野に対する誤った取り扱いに対し謝罪し、メディア各社も報道被害を認めました。一方、長野県警は謝罪を行わず、ただ「遺憾の意」を表明するにとどまりました。

公安委員としての活動

河野は2002年、長野県知事の田中康夫の要請により、長野県公安委員会の委員を1期（3年）務めました。2004年に発生した長野・愛知4連続強盗殺人事件において、その被害者の長女が警察に「犯人視された」と訴えたことに関して、彼女と面談し、松本サリン事件での自らの経験を語り、警察の捜査方法への改善を求める意向を伝えるなど、市民目線での活動を行いました。

その後、長野県警の捜査ミスを批判し、田中知事と対立したために公安委員を更迭されました。妻はサリン事件により意識不明の状態になり、河野は彼女の介護を続けましたが、2008年に妻が亡くなりました。彼はその際、事件が終わることを願うコメントを出しています。河野は報道被害に関する講演を通じて全国各地を訪れ、2010年には鹿児島市に転居し、さらに霧島市に移住しました。

オウムに対する考え

河野はオウム真理教の幹部に対する死刑について慎重な見解を持っており、その理由を「殉教者が生まれる恐れ」や、犯罪者が刑法の規定を理解しているわけではない点に挙げています。また、麻原彰晃に対しても敬称を付けて呼び、教えの間違いを認めるよう求めています。さらに、オウム真理教から離れた「ひかりの輪」の外部監査人も務めており、団体への不安を払拭するために活動してきました。

著作

彼は数冊の著書を出版しており、『妻よ! わが愛と希望と闘いの日々』（潮出版社、1998年）、『松本サリン事件報道の罪と罰』（第三文明社、1996年）などがあります。また、『松本サリン事件　虚報、えん罪はいかに作られるか』（近代文芸社、2001年）や『命あるかぎり～松本サリン事件を超えて～』（第三文明社、2008年）といった著作も刊行されています。

河野義行の活動は、事件の経験を経て多くの人々にメディアリテラシーの重要性を伝えるものとなっており、彼の生涯はただの冤罪被害者の枠を超えて、社会に対して強いメッセージを発し続けています。

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