況鍾

況鍾（きょう しょう）は、明代に活躍した官僚であり、字を伯律、号を龍崗、また如愚とも称しました。彼の出身は南昌府靖安県に遡ります。洪武16年（1383年）に生まれ、正統7年12月30日（1443年1月30日）に生涯を閉じました。

官僚としての経歴

況鍾は、その卓越した事務能力により、早くから頭角を現しました。礼部尚書の呂震に見出され、その才能を高く評価されたことが、彼の官僚としてのキャリアの始まりでした。呂震の推薦を受け、況鍾は礼部儀制司主事に任じられました。その後、その能力はさらに認められ、礼部郎中へと昇進しました。

蘇州知府としての活躍

宣徳5年（1430年）、況鍾は大きな転機を迎えます。吏部尚書の蹇義や礼部尚書の胡濙といった重鎮からの推薦を受け、蘇州知府に抜擢されたのです。当時の蘇州は、政治的な混乱や不正が蔓延る難治の地とされていました。しかし、況鍾はこれらの問題に果敢に取り組み、汚職官吏を徹底的に粛正しました。また、民衆の負担を軽減するために、税賦や徭役の見直しを行い、大幅な軽減を実現しました。さらに、教育の重要性を深く認識し、学校を重視しました。文人や儒者を積極的に礼遇し、その代表として鄒亮を推挙しました。これらの施策により、蘇州の政治は大きく改善され、民衆からの信頼と支持を集めることになりました。

民衆からの信頼と再任

況鍾の母が亡くなった際、彼は一度辞職して喪に服そうとしました。しかし、彼の卓越した行政手腕を惜しむ蘇州の民衆は、宮殿に駆けつけ、況鍾の留任を強く願い出ました。この民衆の熱意を受けて、朝廷は勅命により、況鍾を再び蘇州知府に任命しました。正統6年（1441年）、任期満了を迎えた際にも、蘇州の民2万人以上が巡按御史の張文昌に嘆願し、況鍾の再任を求めました。この民衆の強い支持を受け、英宗は況鍾を正三品に昇進させ、そのまま蘇州府の事務を執り行うことを命じました。これは、彼の行政能力と民衆からの信頼がいかに厚かったかを示すものです。

晩年

正統7年12月丙辰（1443年1月30日）、況鍾は在官のままこの世を去りました。その生涯は、常に民衆のために尽力した官僚としての模範であり、その功績は長く語り継がれています。

参考文献

• - 『明史』巻161 列伝第49

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