泊手

泊手（とまりて、トマイディ）

泊手は、沖縄の琉球王国において発展した伝統的な武道で、首里手、那覇手とともに唐手（現在の空手道）の三大系統の一つとされています。この武術は、当時の泊村（現在の那覇市）を拠点にして、多くの人々によって実践されていました。泊村はその名の通り、当時の琉球において第二の貿易港として栄えており、そのため多くの外国人、特に中国人が出入りしていました。

歴史的背景として、泊村には中国や朝鮮から漂着した人々を受け入れるための施設が存在していました。その中には、武術に秀でた者が多く含まれており、地元の村人たちがこれらの漂着者から拳法を学んだと伝えられています。こうした交流を通じて、泊手の技術や知識が地域に根付いていったのです。

泊手の起源については、首里手や那覇手に比べて明確に記録されていない部分が多くあります。特に幕末の時代、照屋親雲上規箴（1804年-1864年）が中国山東省出身の漂着人から武術を学んだという言い伝えがありますが、実際には彼が高齢であったため、信憑性に欠ける部分も否めません。

一般的に、首里手は敏捷性を重視し、那覇手は鍛錬を重要視する特徴があるとされていますが、泊手は独自の特徴を持っています。「泊武士は片足でも怖い」という言葉が象徴するように、片脚立ちから繰り出される入り身技が大きな特徴であり、他の流派とは異なる不安定さから生まれる柔軟な技術が魅力です。

泊手の代表的な型には、ナイファンチ、パッサイ（松茂良、親泊等）、ワンカン、ワンシュウ、ローハイ、チントウなどがあります。これらの型は、長い歴史の中で受け継がれ、研鑽され続けてきました。泊手の空手家としては、照屋親雲上をはじめとして宇久嘉隆、松茂良興作、親泊興寛、山田義恵、伊波興達、仲宗根正侑などの著名な武道家が存在しています。

また、伊波の教えを受けた久場長仁の系統である屋良朝意は、大阪で活動しており、仲宗根からは剛泊会の代表的な武道者である渡嘉敷唯賢氏へとつながっています。松茂良や親泊から教えを受けた本部朝基、喜屋武朝徳なども、その流派の特徴を受け継ぐ存在として知られています。

現在、泊手は本部流、松林流、少林寺流、泊手空手道協会（剛泊会）、松茂良流興徳会などの流派の中で受け継がれており、各流派がそれぞれの持ち味を生かしながら伝統を守り続けています。泊手は沖縄の文化だけでなく、日本の武道界でも重要な位置を占める武術であり、その技術や教えは、次世代へとしっかりと引き継がれているのです。

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