首里手

首里手（しゅりて）とは

首里手は、琉球王国時代に首里で発展した唐手（からて、現在の空手）の一系統です。首里に住む士族によって継承され、その武術的な特徴を形成してきました。琉球王国時代には、現在のように流派という概念は明確には存在せず、唐手が盛んな地域ごとに首里手、泊手、那覇手という三大系統に分類されていました。しかし、「首里手」という用語が一般的に使われるようになったのは、戦後になってからと考えられています。

歴史的背景

大正時代や昭和初期の大家である船越義珍や本部朝基の文献には、「首里手」という言葉そのものは見られません。船越義珍は、唐手の系統を「昭林流」と「昭霊流」の二派に分けて解説しており、昭林流を首里手、昭霊流を那覇手と解釈する考え方もあります。しかし、船越自身は地域的な分類にこだわらず、首里手の基本型である平安（ピンアン）を昭林流に、ナイハンチを昭霊流に分類するなど、柔軟な考え方を持っていました。

本部朝基は、「古来、琉球に伝はれる唐手は首里・那覇・泊の三大系統に大別することが出来る」と述べており、地域的な特徴があったことは認めていますが、首里手等の用語はまだ使用していませんでした。また、この分類も流儀のような厳密なものではなく、あくまで概略的なものとして捉えていました。例えば、同じ首里出身の松村宗棍とその弟子・糸洲安恒の間にも、武術的な相違があったと述べています。

首里手の特徴

一般的に、首里手は柔軟性を重視し、那覇手は筋骨を重視すると言われています。泊手は首里手と大きな違いはなかったようです。本部朝基によれば、首里では「六分の力でもって習練し、ひたすら敏活を旨とした」のに対し、那覇では「十分の力を傾注し、専ら、筋骨の発達に意を用いた」とされています。

首里手の代表的な型には、ナイファンチ、パッサイ（抜塞：バッサイ）、クーサンクー（公相君）などがあります。松村宗棍は、ナイファンチ、クーサンクー、五十四歩のみを教伝していたと言われています。

首里手の主な空手家

首里手の流れを汲む主な空手家としては、佐久川寛賀、松村宗棍、知花朝章、糸洲安恒、安里安恒、喜屋武朝扶、本部朝勇・本部朝基兄弟、屋部憲通、花城長茂、大城朝恕、船越義珍、喜屋武朝徳、知花朝信、城間真繁、摩文仁賢和、遠山寛賢などが挙げられます。

首里手の流れを汲む主な流派

首里手の流れを汲む空手流派としては、松濤館流、錬武会流、和道流、糸東流、本部流、小林流、松林流、少林寺流、少林流などがあります。

首里手は、その柔軟性と敏捷性を重視する特徴から、多くの空手流派に影響を与え、現代空手の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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