法定刑

法定刑とは

法定刑とは、ある犯罪行為に対して、法律が罰則として定めている刑罰のことです。これは、罪刑法定主義という原則に基づいています。

罪刑法定主義と法定刑

罪刑法定主義とは、「何が犯罪であるか」、そして「その犯罪に対してどのような刑罰が科されるべきか」を、あらかじめ法律で明確に定めなければならないという原則です。これにより、国民はどのような行為が犯罪となり、どのような刑罰を受けるのかを予測できるようになります。

法定刑は、この罪刑法定主義を具現化するもので、法律によって定められた刑罰の種類と範囲を指します。具体的には、刑の種類（懲役、禁錮、罰金など）や、刑期の長さなどが規定されます。

法定刑の種類

法定刑には、以下の2つの種類があります。

絶対的法定刑: これは、刑罰の種類と量が一律に定められており、裁判官が選択の余地を持たないものです。例えば、外患誘致罪のように、刑罰が死刑のみと定められている場合が該当します。
相対的法定刑: これは、刑罰の種類や量について、裁判官に一定の裁量権が与えられているものです。多くの犯罪は、この相対的法定刑が適用されます。裁判官は、法律で定められた範囲内で、犯罪の性質や被告人の情状などを考慮して、適切な刑罰を選択します。

処断刑と宣告刑

個々の刑事裁判においては、まず、法律で定められた法定刑を基準として、刑法総則の規定（例えば、酌量減軽など）を適用し、処断刑が決定されます。処断刑とは、法律上、被告人に科すことができる刑罰の範囲を指します。

その上で、裁判官は、処断刑の範囲内で、被告人の具体的な事情を考慮して、最終的に宣告する刑罰（宣告刑）を決定します。

前近代の法体系との比較

古代の律令など、前近代の東アジアや日本の法体系では、原則として絶対的法定刑が採用されていました。しかし、これでは柔軟な刑罰の適用が難しいため、「断罪無正条」や「不応為条」といった、裁判官の判断に委ねる制度が設けられ、情理や類推適用に基づく刑事処分が行われていました。これは、罪刑法定主義とは対照的な運用方法といえます。

まとめ

法定刑は、罪刑法定主義に基づき、犯罪と刑罰を明確にするための重要な制度です。これにより、法の安定性と予測可能性が確保され、国民の権利が守られています。現代の刑事裁判では、法定刑を基礎として、個々の事件の具体的な状況に応じた適切な刑罰が決定されます。

もう一度検索