波動大戦

波動大戦：架空戦記の叙述

小説『波動大戦』は、橋本純氏によって執筆された全6巻からなる架空戦記作品です。平成時代の日本を舞台に、未曾有の大地震が発生。その結果、伊東市と海上自衛隊の一部部隊が昭和18年の日本へと時空転移するという衝撃的な展開から物語は始まります。

地震発生直後、政府は災害救助に自衛隊を派遣。その中には野党党首でありながら国土交通大臣を務める姿千鶴も含まれていました。しかし、地震は秘密裏に開発されていた原子炉兼研究施設の暴走を引き起こし、時空転移という不可解な現象を招いたのです。

転移先の昭和18年は、平成の日本とは異なる歴史を辿ったパラレルワールドでした。ハワイ攻撃の失敗により、大艦巨砲主義に回帰した大日本帝国海軍。サイパン陥落の危機、そしてB-29による空襲の影が忍び寄る、まさに窮地に陥った日本がそこには存在していました。

この危機的状況を打開すべく、姿大臣は思い切った決断を下します。彼女は、伊東市と共に時空転移してきた海上自衛隊の高度な技術と戦力を利用し、クーデターを実行。陸軍首脳を拘束、国会を制圧し、自ら新政権を樹立します。これにより、新生日本が誕生したのです。

新生日本は、平成の技術を駆使し、アメリカ海軍との戦いに挑みます。海上自衛隊の最新鋭兵器と技術は、劣勢だった日本に大きな転機をもたらし、サイパン奪還という偉業を成し遂げます。しかし、勝利の裏には、膨大な軍事費の増加という問題が潜んでいました。

軍事費の増大は、平成から来た難民の支援費用と相まって深刻な予算不足を招きます。この問題を解決するため、日本政府は驚くべき決断をします。戦艦「信濃」をナチス・ドイツに売却する計画です。後に「武蔵」に変更されたこの計画は、売却益の一部をドイツ製兵器の購入に充てることを目的としていました。

この取引のため、イージス艦「きりしま」を旗艦とする連合艦隊が編成され、ドイツへ向けて出発します。その艦隊には、航空母艦「翔鶴」「瑞鶴」、輸送艦「おおすみ」、そして護衛艦などが含まれていました。しかし、インド洋で予想外の敵と遭遇します。平成の世界では建造されなかったはずの戦艦「モンタナ」とイギリス海軍の「プリンス・オブ・ウェールズ」です。激しい戦闘の末、日本側は勝利を収めます。

サイパン奪還の報復として、米軍は再びサイパンへ侵攻。この戦闘で、海上自衛隊の護衛艦1隻が撃沈されるという痛烈な損失を被ります。この出来事をきっかけに、平成の人々の間で厭戦気分が広がり始めます。

戦争の早期終結と新世界秩序の構築を願う姿総理は、究極の決断を迫られます。それは、これまで封印されていた、ある兵器の使用です。物語は、日米最終決戦、そしてその結末へと向かっていきます。

『波動大戦』は、歴史改変、国家存亡、そして未来への希望といった様々なテーマを織り交ぜた、スケールの大きい架空戦記作品です。平成と昭和、そして異なる世界の技術や兵器が交錯する、ダイナミックな展開は、読者をその世界へと引き込みます。各巻のタイトルからも、物語の壮大さと激しさが伝わってきます。

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