泣いた赤鬼

泣いた赤鬼

『泣いた赤鬼』は、児童文学作家である浜田廣介による作品で、彼の代表作の一つとして知られています。小学校の教科書にも掲載され、広く親しまれています。この物語は、もともと『おにのさうだん』というタイトルで雑誌に連載され、後に『ひろすけひらかな童話』に収録されました。

あらすじ

物語の舞台は、人里離れた山の中。そこに住む赤鬼は、人間と仲良くなりたいと心から願っていました。彼は「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」と書かれた立て札を家の前に立て、人間が訪れるのを待ちます。しかし、人間たちは鬼を恐れ、誰も赤鬼の家には近づこうとしません。赤鬼は悲しみと悔しさでいっぱいになり、立て札を引き抜いてしまいます。

そんな時、親友の青鬼が赤鬼を訪ねてきました。事情を聞いた青鬼は、ある作戦を提案します。「ぼくが人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ君が出てきて、こらしめる。そうすれば人間たちにも君がやさしい鬼だということがわかるだろう」というのです。赤鬼は友人に迷惑をかけることをためらいますが、青鬼は強引に彼を連れて人間の村へと向かいます。

作戦は実行され、青鬼は村で騒ぎを起こし、赤鬼はそれを鎮めます。そのおかげで、赤鬼は村人たちから感謝され、人間と友達になることができました。毎日が楽しくて仕方ありません。しかし、赤鬼には気がかりなことがありました。それは、青鬼が作戦の日から一度も遊びに来ないことでした。今の幸せは青鬼のおかげだと考えた赤鬼は、青鬼の家を訪ねます。

青鬼の家の戸は固く閉ざされており、戸口には一枚の張り紙が。「赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、ぼくは、旅に出ることにしました。長い長い旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。ぼくはどこまでも君の友達です。青鬼」

赤鬼は手紙を何度も読み返し、青鬼の友情に深く感動し、涙を流すのでした。

その後

1989年、青鬼は香川県の「観光客を温かく迎える親切運動」のマスコットキャラクター「親切な青鬼くん」として採用され、香川県の県政テレビ番組にも登場しました。その後も、消防団員応援制度のマスコットキャラクター「青鬼団長くん」として活躍しています。

この物語は多くの人々に影響を与え、寺村輝夫は『泣いた赤鬼』に対抗する物語として創作昔話『おにの赤べえ』を執筆しました。2011年には、山崎貴と八木竜一の共同監督により、3DフルCG映画『friends もののけ島のナキ』として映画化されました。また、2015年には、テレビドラマ「私の青おに」が放映され、赤鬼と青鬼の「その後」を描いた現代劇として話題を呼びました。

『泣いた赤鬼』は、友情や自己犠牲といった普遍的なテーマを描き、世代を超えて読み継がれる名作として、これからも多くの人々の心に響き続けるでしょう。

もう一度検索