泣く子はいねぇが

泣く子はいねぇが

2020年11月20日に日本で公開された映画。佐藤快磨が脚本と監督を務めた商業長編デビュー作であり、国際的に知られる是枝裕和が企画として名を連ねている。主演は仲野太賀。

概要

本作は、秋田県男鹿半島に伝わる国の重要無形民俗文化財であり、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている「男鹿のナマハゲ」を物語の重要な要素として取り入れている。伝統的な祭事と現代に生きる若者の姿を対比させながら、父となることや大人になることへの戸惑いを抱える主人公が、葛藤を経て成長していく過程を描く。音楽は折坂悠太が担当し、劇伴および主題歌「春」を書き下ろしている。脚本に感銘を受けたという福山雅治が出資者として制作を支援したことでも話題となった。

あらすじ

舞台は秋田県男鹿半島。主人公の若い男、たすくとその妻、ことねの間には幼い娘がいた。しかし、父としての責任感に欠け、未だに子供じみた行動が目立つたすくに対し、妻のことねは不満と苛立ちを募らせていた。毎年大晦日に行われる伝統のナマハゲ行事に、たすくも地元の仲間たちと参加することになる。妻からは酒を控えて早く帰るようにと念を押されていたにもかかわらず、たすくは行事の場で深酒をしてしまう。泥酔状態となった彼は、内なる鬱憤を晴らすかのように、ナマハゲの面をつけたまま全裸で真冬の男鹿の町へ飛び出し、駆け巡るという前代未聞の騒動を引き起こす。

この破天荒な行為はテレビで全国放送されてしまい、たすくは妻はもちろん、家族や地元の人々からの信頼を一瞬にして失ってしまう。居場所をなくしたたすくは、故郷から逃れるように一人東京へと向かう。それから二年という月日が流れるが、大都会での生活にも馴染むことができず、孤独を深めていた。そんな中、故郷に残してきた妻と娘への思いが日増しに強くなっていく。ある時、地元の親友である志波から、ことねが水商売で働いているという話を聞かされる。この報に大きな衝撃を受けたたすくは、自身の過去の愚かな行いとようやく向き合う決意を固め、男鹿へ帰ることを決心する。

しかし、一度は伝統と尊厳を汚したたすくの帰郷を、地元の人々は容易には受け入れようとしない。故郷は彼にとって温かく迎え入れてくれる場所ではなくなっていた。ようやく探し出した妻のことねは、すでに新しい人生を歩むことを決めており、別の男性との再婚を控えていた。定職もなく、娘の養育費すら満足に払えないたすくは、ことねから厳しい言葉を浴びせられ、追い詰められていく。故郷にも、家族のもとにも、安息の場所を見つけられない絶望の中、その年の大晦日を迎える。たすくは手作りの粗末なナマハゲの面を被り、伝統行事とは異なる形で、ことねの家を訪れる。そして、成長した娘の姿をただ静かに、目に焼き付けるのだった。

キャスト

後藤たすく：仲野太賀
桜庭（後藤）ことね：吉岡里帆
志波亮介：寛一郎
後藤悠馬：山中崇
大友：田村健太郎
フットサル場の同僚：古川琴音
松浦祐也
師岡広明
高橋周平
ことねの再婚相手：板橋駿谷
猪股俊明
アナウンサー：関向良子
後藤せつ子：余貴美子
夏井康夫：柳葉敏郎

スタッフ

監督・脚本・編集：佐藤快磨
企画：是枝裕和
音楽：折坂悠太
主題歌：折坂悠太「春」
エグゼクティブプロデューサー：河村光庸
プロデューサー：大日向隼、伴瀬萌、古市秀人
撮影：月永雄太
照明：後閑健太
録音：吉田憲義
美術：西尾共未
衣装：馬場恭子
ヘアメイク：那須野詞
小道具：故引英里
スクリプター：内田智美
音響効果：廣中桃李
キャスティング：田端利江
スチール：草野庸子
助監督：森本晶一
制作担当：角田隆
ラインプロデューサー：中円尾直子

主な出品・受賞歴

第68回サン・セバスティアン国際映画祭 オフィシャルコンペティション部門出品
最優秀撮影賞（月永雄太）受賞
第21回東京フィルメックス コンペティション部門出品
第56回シカゴ国際映画祭 新人監督コンペティション部門出品
* 第30回日本映画批評家大賞 新人監督賞（佐藤快磨）受賞

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