泥棒かささぎ

泥棒かささぎ (La gazza ladra)

ロッシーニが作曲したオペラ・セミセリア『泥棒かささぎ』は、1817年にミラノ・スカラ座で初演されました。全2幕からなり、演奏時間は約3時間半。一見コミカルなタイトルとは裏腹に、冤罪と救済をテーマにした感動的な物語が展開されます。

作曲の背景

ロッシーニは当時、スカラ座のためにオペラを作曲しており、本作は、それまでのオペラ・ブッファとは異なる、よりシリアスな題材に挑戦した作品です。フランスで流行していた「救出オペラ」の影響を受け、社会情勢や権力者による圧政、そして無実のヒロインが救われるという要素が盛り込まれています。

作品の特徴

『泥棒かささぎ』は、以下の特徴を持っています。

救出オペラの要素: 当時の社会情勢を反映し、権力者と庶民の対立、冤罪、そして最終的な救済という物語が展開されます。
真犯人はカササギ: 物語の鍵となるのは、銀食器を盗むカササギ。この設定が、重いテーマの中に一服の清涼感を与えています。
書き下ろしの音楽: ロッシーニのオペラとしては珍しく、劇中の音楽はすべて書き下ろしで構成されています。有名な序曲も、オペラ本体の音楽から採用されています。

あらすじ

物語の舞台は、イタリアの田舎。ファブリッツィオ家の女中ニネッタは、恋人ジャンネットの帰還を心待ちにしています。しかし、ニネッタの父親フェルナンドが脱走兵として現れたことから、運命の歯車が狂い始めます。

代官はニネッタに横恋慕し、彼女の父親を匿っていることを知ると、ニネッタを陥れようとします。そんな中、カササギが銀のスプーンを盗み、ニネッタは盗みの罪を着せられてしまいます。

ニネッタは逮捕され、死刑宣告を受けますが、恋人のジャンネットは彼女の無実を信じます。ニネッタは牢獄で絶望しますが、ピッポに託したお金がきっかけで、カササギが真犯人であることが判明します。ニネッタは無罪となり、父親も恩赦を受け、愛するジャンネットとの再会を果たします。

主要な登場人物

ニネッタ: ヴィングラディート家の女中。ジャンネットの恋人。冤罪に苦しむヒロイン。
ジャンネット: ニネッタの恋人。兵役から帰還する。
ファブリッツィオ: ジャンネットの父。ニネッタに同情的。
ルチーア: ジャンネットの母。ニネッタに厳しく当たる。
フェルナンド: ニネッタの父。脱走兵。
代官: ニネッタに横恋慕する権力者。
ピッポ: ヴィングラディート家の召使い。

主要曲

アリア「私の周りがみんな」（ニネッタ）
アリア「さあこの腕の中に」（ジャンネット）
アリア「私の計画は用意周到だ」（代官）
二重唱「でもやっと何時の日か分かってくれるでしょう」（ニネッタ、ジャンネット）
アリア「君のためなら愛するかわい子ちゃんよ」（代官）
二重唱「ああ、私からといってこの指輪を」（ニネッタ、ピッポ）
アリア「盗みで訴えられたと…」（フェルナンド）
死刑台への行進曲「不幸せで不運な娘だ」

まとめ

『泥棒かささぎ』は、ロッシーニの音楽性と、冤罪という社会的なテーマが融合した傑作です。カササギという意外な犯人設定や、救出オペラの要素が、物語に深みを与えています。ニネッタの運命にハラハラしながらも、最後は救われるという感動的な結末は、観る者の心を揺さぶります。

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