津上退助

津上退助：日本の精密機械産業の先駆者

津上退助（1893年9月10日 - 1974年7月4日）は、日本の技術者、実業家であり、津上製作所（現・ツガミ）の創業者として知られています。

生い立ちと青年期

津上退助は、福岡県糸島郡北崎村宮ノ浦（現・福岡市西区宮浦）で、糸島郡役人の二男として生まれました。津上家は代々、博多湾西部の廻船業者を束ねる大庄屋であり、福岡藩の御用船として米や材木を遠方まで運んでいました。幼い頃から軍人を志し陸軍幼年学校を受験するも、体格が理由で断念。その後、福岡県立中学修猷館、三井工業学校を経て、炭鉱や鉄工所などで勤務した後、上京し精密機械の研究を始めました。

ゲージブロック国産化への挑戦

1923年6月、津上は東京本所大平町で、機械工業の基礎となる長さの原器、ゲージブロックの研究を開始しました。当時、ゲージブロックは輸入に頼っていましたが、津上は研究の末、国産化に成功しました。

津上製作所の設立と発展

1928年、精密測定機械器具の国産化を目指し、東京に津上製作所（後の東洋精機、現・三井精機工業）を設立するも、三井財閥との経営方針の違いから1936年に退社。その後、1937年3月に新潟県長岡市に津上製作所（現・ツガミ）を設立。ゲージブロック製造に適した新潟の県民性に注目し、精密測定機械類の生産を開始しました。1939年からは工作機械の製造も開始し、長岡の地に精密機械産業を根付かせました。

戦時下の苦難と戦後の再起

太平洋戦争中、津上製作所は軍需工場として発展しましたが、米軍の資料によると、津上製作所のゲージブロック工場は、日本の軍需生産の基礎となるため、原爆投下の目標の一つとされていました。戦後、工作機械製造禁止令により製造中断を余儀なくされましたが、ミシンや紡績機の製作に取り組み苦境を乗り越えました。この時期、東邦生命会長太田清蔵や、岸信介、青木一男など、津上の人脈の広さを示す人物が社外取締役に名を連ねました。

結論

津上退助は、ゲージブロックの国産化を成し遂げ、精密機械産業の発展に大きく貢献しました。津上製作所（現・ツガミ）を設立し、長岡の地場産業を支え、日本の産業発展に尽力した人物として、その功績は忘れることはできないでしょう。

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