津別事件

『津別事件』とは、第二次世界大戦が終結して間もない1947年（昭和22年）9月10日に、北海道東部の網走郡津別町で起きた集団同士の衝突事件です。この出来事は、戦後の社会が混乱する中で、露店での営業を巡る摩擦から、在日朝鮮人の一部グループと日本の的屋との間に生じた対立が背景にありました。

終戦後、北海道内では一部の在日朝鮮人グループによる露店での無秩序な振る舞いや、金銭の不払いといった行為が問題となり、露店を仕切っていた的屋の人々は、こうした行動に対し強い反感と憤りを感じていました。この状況が続けば、一般の買い物客が露店に寄り付かなくなり、商売に大きな打撃を受けるという危機感が、的屋側の間で共有されるようになりました。

このような緊張状態の中、的屋側は事態の打開を図るため、道内最後の夏祭りが行われる津別神社の祭礼を機会に、朝鮮人グループに対する対抗措置を講じることを計画します。この計画には、北海道内だけでなく、本州からも多くの的屋関係者が集結し、津別神社の祭りに備えて準備が進められました。

事件の直接的な発端は、1947年9月10日の午前11時30分頃に発生しました。祭りの会場に設けられていた遊戯場に3名の朝鮮人男性が現れ、料金を支払わずに遊んだ上、露店の商品陳列台をひっくり返すという乱暴な行為に及びました。この場に居合わせた的屋の人々は、これらの行動に対して激しく反発し、3名を取り押さえて暴行を加えました。

暴行を受けた3名のうちの誰かが、ただちに在日本朝鮮人連盟（通称：朝連）の北見支部に連絡を取り、助けを求めました。報を受けた北見支部では、すぐさま約20名の朝鮮人男性を集め、救援のために津別町へ向けて出発しました。彼らは移動の途中に美幌町に立ち寄り、そこで竹槍や棍棒といった多数の凶器を車両に積み込みました。さらに人を集めたことで、最終的には約50名からなる集団に膨れ上がりました。

事態の悪化を懸念した北海道警察部美幌警察署は、両者の間に立って衝突を回避しようと仲裁に入りました。警察の働きかけにより、双方からそれぞれ3名の代表者を選出し、現場での話し合いが試みられました。しかし、双方の主張は折り合わず、交渉は難航し、時間は午後11時になろうとしていました。

業を煮やした警察は、再度仲裁に乗り出し、具体的な解決案を提示しました。その内容は、「朝連側は、乱暴な行為を行った3名に的屋側への謝罪と賠償をさせること」、そして「朝連側は、集まった集団を1時間以内に現場から引き上げさせること」というものでした。この提案に対し、ようやく両者の間で合意が成立しました。この頃になると、これまでの経緯や集団の対立に関心を持っていた一般の津別町民約300名も現場周辺に集まっており、中にはそれまでの朝鮮人グループの行状を非難する声も聞かれました。

合意が成立し、事態が収束に向かうかと思われた矢先、午後11時20分頃、朝鮮人側の集団から打ち上げ花火のようなものが的屋側の集団に向けて落下しました。これをきっかけとして、それまで抑えられていた緊張が一気に噴出し、両集団は激しく衝突しました。現場に集まっていた町民たちも、これまでの不満からか、的屋側に加勢して石を投げつけるなどしました。乱闘は約30分間にわたって続きました。

この衝突の結果、朝鮮人側では2名の死者と19名の重軽傷者を出すに至りました。一方、的屋側の集団にも6名の軽傷者が出ました。津別事件は、戦後の社会混乱期における集団間の対立がいかに深刻な事態を引き起こしうるかを示す事例として記憶されています。

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