流れ星の唄

流れ星の唄

梶山季之の長編小説『流れ星の唄』は、1971年に『週刊実話』で連載された作品です。舞台は、東北地方の山村（作中の描写から岩手県と推測されます）から東京へ集団就職した若者たちが暮らす東京。

あらすじ

物語は、中学校を卒業したばかりの早苗、良太、幸吉の三人が、盛岡市出身で東京で青果店を経営する吾妻物産の店舗に集団就職するところから始まります。都会での生活に希望を抱く彼らでしたが、現実は厳しく、それぞれの欲望や葛藤に翻弄されていきます。

早苗は、店の常連客からラブレターを受け取り、淡い恋心を抱きます。良太は、東京の靴屋で赤いハイヒールを購入し、密かに女装を楽しむようになります。一方、幸吉は、同性から『口取り』という行為を受けることに耽溺していきます。

登場人物

竹内早苗: 分校の中学を卒業後、中野の分店「吾妻青果店」二階のパーラーでレジ係として働く15歳の美少女。都会での生活に憧れを抱きつつも、純粋な心を持ち続ける。
相沢良太: 本校の中学を卒業後、同じく一階の青果売り場で働く。痩せて長身、睫毛の長い女顔の美少年。姉ばかりの家庭で育ち、密かに女装を楽しむ。自身の性自認に悩む。
相沢登女子: 良太のすぐ上の姉。良太は彼女の服や靴を「有効利用」し、幼少期には女性的な服装をさせられていた。良太の女装のルーツを象徴する人物。
島田幸吉: 同じく本校の卒業生で一階の青果売り場で働く。小柄で小太り、愛嬌のある丸顔。厳格な父親の元で育ち、同性愛に耽溺していく。
設楽: 本校の国語教師。幸吉に同性愛を勧める。既成概念にとらわれない人物として描かれる。
中井: 分校で早苗の担任を務める男性教諭。上京する早苗に助言を与える。
中井佐和子: 中井教諭の妻。早苗に都会での処世術を教える。
吾妻一太郎: 「吾妻物産」の社長で、本店「八百一」の経営者。会社寮の寮長であった妻と死別している。
吾妻光子: 一太郎の三女で、吾妻物産の総務や人事を担当。会社の経営に深く関わる。
川合俊一: 吾妻物産の取締役で「八百一」の支配人。一太郎は彼を光子の婿にしたがっている。
お時: 寮の雑役婦。女装した良太に興味を持つ。
春江: 女子寮で早苗と同室の分店「吾妻青果店」一階の売り子。
吾妻英一: 一太郎の長男。青梅街道で分店を経営している。
吾妻健二: 一太郎の次男。同じく分店で働く。
三郎: 古株の店員。吾妻父子と名前が似ているが血縁はない。

テーマ

『流れ星の唄』は、集団就職で上京した若者たちが、都会の欲望や誘惑に翻弄されながら、自己を見つめ直す姿を描いています。性や人間関係の複雑さ、そして人間の持つ多面性を浮き彫りにし、読者に深い問いを投げかける作品と言えるでしょう。

書誌情報

『流れ星の唄』桃源社 1971年
『流れ星の唄（上）』角川文庫 1983年 ISBN 978-4-041360361
『流れ星の唄（下）』角川文庫 1983年 ISBN 978-4041360378

関連事項

小売
集団就職
* 女装

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