浄水

浄水（じょうすい）

「浄水」という言葉は、一般的には飲用に適した清浄な水を指す際に用いられます。しかし、それだけでなく、水源から取水した原水に対し、適切な処理を施すことで水をきれいにする行為そのものも浄水と呼びます。

この用語の指す範囲は、分野によって異なる場合があります。例えば、工業分野では、特定の製造プロセスなどに適した水質に調整することを浄水と称することがあり、この場合は必ずしも人がそのまま飲めるレベルの水質であるとは限りません。

処理としての浄水

上水道において行われる浄水処理は、水道法および水質基準に関する省令によって定められた厳しい基準を満たすことを目的としています。これは、国民に安全で安心して飲める水を供給するための必須のプロセスです。処理の内容は、供給源となる原水の水質に大きく依存します。

例えば、工場排水や生活排水、農地からの流入などにより水質汚染が進んだ河川などを原水とする地域では、非常に複雑で高度な処理技術が求められます。具体的には、水中に浮遊する粒子を取り除くための分離処理、水に溶け込んだ有害物質を除去するための処理、そして細菌やウイルスといった病原体を死滅させるための強力な殺菌処理などが、複数の工程を組み合わせて実施されます。

対照的に、地下水など、比較的汚染が少なく良質な水源を確保できる地域では、浄水処理は比較的簡易で済む場合があります。例えば、最低限の安全性を確保するための塩素による殺菌や、水の味覚に関わる硬度を調整する程度の処理のみで供給されることも少なくありません。

代表的な濾過方式

浄水処理において、水中の不純物を取り除くための重要な工程が濾過です。この濾過には、主に「緩速濾過（かんそくろか）」と「急速濾過（きゅうそくろか）」という二つの代表的な方式があります。

緩速濾過方式

日本では、原水の水質汚染が比較的軽微な場合に主に採用される方式です。この方式では、まず沈殿池で大きな浮遊物を沈殿させることで粗い不純物を取り除きます。その後、厚さ約70センチメートルの砂を敷き詰めた広い濾過池にゆっくりと水を通します。この砂層の表面や内部には、多種多様な微生物が集まって形成された生物膜があり、この微生物の働き（生物浄化作用）によって、水中の有機物や濁り成分などが分解・吸着され、水がきれいになります。この過程は、自然界で水が砂層を通り抜けて浄化される仕組みに近いと言われます。

緩速濾過方式は、機械設備や電気設備といった複雑な付帯設備をほとんど必要としないことが特徴です。主要な施設が砂やコンクリートなどの土木・建築構造物であるため、施設の平均的な耐用年数が非常に長く、中には100年を超える稼働実績を持つ施設も存在します。ただし、濾過速度が遅いため、処理能力に対して広い敷地が必要になる傾向があります（ただし、濾過以外の付帯設備が少ないため、浄水場全体の面積では急速濾過と大差ないこともあります）。

急速濾過方式

日本の上水道において、現在最も普及している（約7割の施設で採用されている）濾過方式です。この方式では、まず原水に凝集剤（ぎょうしゅうざい）と呼ばれる薬剤を加え、水中の微細な粒子や濁り成分を互いにくっつけて大きな塊（フロック）を作ります。このフロックを沈殿池で沈ませてから、急速濾過池の砂層を比較的高速で通水させてろ過します。凝集剤によって効率的に濁り成分が除去されるため、緩速濾過に比べて処理速度が格段に速いのが特徴です。

急速濾過方式の最大の利点は、処理速度が速いことに加えて、必要な濾過池の面積を大幅に縮小できる点です。これにより、都市部など限られた土地でも大規模な浄水場を建設することが可能になります。一方、凝集剤の管理や、フロックを効率的に沈殿・除去するための設備、濾過池の洗浄設備など、多くの機械・電気設備が必要となるため、施設の平均耐用年数は緩速濾過方式に比べて短い傾向があります。

これらの濾過方式は、原水水質や必要な水量、設置場所の条件などを考慮して最適なものが選択・組み合わされ、私たちのもとへ安全で清浄な水道水が供給されています。

もう一度検索