浅腓骨神経

浅腓骨神経（せんひこつしんけい、[英] superficial peroneal (fibular) nerve、[羅] nervus fibularis superficialis）は、下腿の主要な末梢神経の一つであり、足の感覚と運動機能に重要な役割を果たしています。

走行

浅腓骨神経は、膝の近くで総腓骨神経から分岐します。総腓骨神経は、坐骨神経から分かれ、大腿の後面を下行してきた神経です。浅腓骨神経は、腓骨頭の周りを回り込み、下腿の前外側部分へと進みます。下腿を下行する間、この神経は腓骨筋群、具体的には長腓骨筋と短腓骨筋に筋枝を送ります。これらの筋肉は、足関節の底屈と外がえし（足の裏を外側に向ける動き）に作用します。

下腿を走行した浅腓骨神経は、足背（足の甲）に到達すると、2つの主要な皮神経に分岐します。これらの皮神経は、足の皮膚に感覚を提供します。

1. 内側足背皮神経：足背の内側部分、具体的には親指（母趾）の付け根あたりから足関節の内側に感覚を伝えます。
2. 中間足背皮神経：足背の中央部分から、第2趾、第3趾、第4趾の付け根あたりにかけての皮膚に感覚を提供します。

支配筋

浅腓骨神経は、主に以下の筋肉を支配しています。

長腓骨筋：下腿の外側部に位置し、足関節の底屈と外がえしを行う筋肉です。足関節の安定化にも貢献します。
短腓骨筋：長腓骨筋のすぐ内側に位置し、同様に足関節の底屈と外がえしを行います。長腓骨筋と協力して、足部の動きを制御します。

これらの筋肉の機能は、歩行、走行、ジャンプなどの運動において重要です。浅腓骨神経が損傷すると、これらの筋肉の麻痺や感覚障害が生じ、運動能力に影響を及ぼす可能性があります。

臨床的な重要性

浅腓骨神経は、外傷や圧迫を受けやすい神経です。例えば、足関節捻挫や下腿の骨折などが原因で損傷することがあります。また、きつい靴を履いたり、長時間足を組んだりすることでも、神経が圧迫され、絞扼性神経障害を引き起こすことがあります。

浅腓骨神経が損傷すると、以下のような症状が現れることがあります。

足背の感覚低下：内側足背皮神経または中間足背皮神経が支配する領域の感覚が鈍くなる、または消失します。
足関節の運動障害：長腓骨筋や短腓骨筋の麻痺により、足関節の底屈や外がえしが困難になります。これにより、歩行が不安定になることがあります。
神経痛：神経の損傷部位に痛みが生じることがあります。この痛みは、鋭い痛みや焼けるような痛みとして感じられることがあります。

浅腓骨神経の損傷が疑われる場合は、神経学的検査や画像検査（MRIなど）を行い、診断を確定する必要があります。治療法としては、保存的治療（安静、鎮痛剤、理学療法など）や、手術的治療（神経の圧迫を解除する手術など）があります。

関連事項

総腓骨神経
深腓骨神経
下腿
足背
腓骨筋群

浅腓骨神経の理解は、下腿や足部の疾患を診断し、適切な治療を行う上で不可欠です。

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