浅草国技館

浅草国技館の歴史

浅草国技館（あさくさこくぎかん）は、1912年に東京市浅草区に設立された相撲興行専用の施設です。「第二国技館」として知られるこの場所は、相撲のみならず、その後の劇場としての活用においても重要な役割を果たしました。開館からわずか数年後には劇場「遊楽館」に改装され、さらに「吾妻座」という名前のもとで新たな歴史を形成しましたが、1920年の火災によって全焼する運命にありました。

施設の特徴と設計

浅草国技館は、辰野金吾と葛西萬司により設計され、建物はサラセニック様式を基にした木造でありました。4階建てのこの施設は、正面の円柱から高く86尺の高さを持ち、エレベーターを含む5つの階段が設けられていました。観覧席は全て桟敷形式で、訪れる観客を12,000人も収容することができました。また、土俵は4間半四方の広さを持ち、貴賓席の装飾は特に美しいと賞賛されました。

南側には力士養成場が併設され、ここでは相撲の技術向上を目指す力士たちが鍛錬していました。この施設は観客を8,000人収容でき、身体を鍛えるために学生や軍人も招待されていました。さらに、貴賓館も設置され、日本風と西洋風の設計が融合した特別な空間となっていました。全体としても公共的事業の一環として、850坪の広さにわたる庭園や、消防用の設備も整えられました。

設立の背景

国技館の創設を提言したのは、山中 龜太郎でした。相撲と国家の力を憂慮し、国体崩壊を防ぐための施策としてこの国技館を建設することを決意しました。彼の考えは、相撲文化を発展させると共に、若者たちに教育的な刺激を与えることにありました。浅草公園が選ばれたのは、その盛況な立地ゆえであり、若者たちの風紀を向上させるため、ここに観衆を集める目的があったのです。

劇場への変遷

1913年、浅草国技館は日活に買収され、遊楽館と改称されました。その後の1914年には正式に開館し、さまざまな演目が上演されましたが、1917年にはさらに「吾妻座」に改名し、舞台芸術の中心ともなりました。しかし、1920年の早春、火災事故に見舞われ、施設はほぼ全焼してしまいました。火災の原因は不明で、特に注目を集めることで裁判が起こり、故障の原因に関する法的な議論が続きました。

火災と裁判

火災は1920年の午前8時10分に開始され、短時間で場内に燃え広がりました。その結果、異常な緊迫感の中で消火活動が行われ、生命を失う若い女性も出てしまいました。日活は松竹に対して60万円の損害賠償を請求しましたが、最終的には長期にわたる裁判の末に、松竹側が敗訴し僅かに賠償を支払うこととなりました。

浅草国技館の結末

火災後、跡地には昭和座が再建され、さらに後に浅草東映として知られる劇場に変わりました。浅草国技館は一時的には観客で賑わいましたが、相撲の本場所が開催されることはなかったことが「台東区史」に記されています。館の発展と共に、東京の文化に多大な影響を与えたこの場所の歴史は、今も語り継がれています。

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