浅見淵

浅見淵

浅見淵（あさみ ふかし、1899年6月24日 - 1973年3月28日）は、日本の小説家、文芸評論家であり、昭和期の文壇において重要な役割を果たしました。

生涯

浅見淵は兵庫県神戸市に生まれ、1926年に早稲田大学文学部国文科を卒業しました。大学在学中には同人誌「朝」に参加し、処女小説「山」が下村千秋に高く評価されたことが、文筆家としての道を歩むきっかけとなりました。

1933年には尾崎一雄、丹羽文雄らと共に同人誌「小説」を創刊。その後も1934年に尾崎、丹羽、田畑修一郎と「世紀」を、1935年には尾崎、小田嶽夫らと「木靴」を創刊するなど、精力的に文芸活動を展開しました。また、1935年には砂子屋書房の創業にも参加しています。

戦時中は満洲国に渡り、現地の文化に触れながら文学活動を続けました。戦後、1949年には早稲田大学高等学院の講師となり、翌年には専任教員に就任。1960年からは早稲田大学商学部でも教鞭を執り、1970年に定年退職するまで後進の育成に尽力しました。

私生活では、井伏鱒二や上林暁らと親交を深め、「阿佐ヶ谷会」の主要メンバーとして交流しました。特に尾崎一雄とは親しく、浅見のエッセイ『単線の駅』や回想記『あの日この日』には、尾崎との交流が描かれています。

文芸評論家としては、梅崎春生、石原慎太郎、三浦哲郎、五木寛之といった新進気鋭の作家たちをいち早く見出し、世に送り出すことに情熱を注ぎました。新人作家の発掘と育成は、浅見のライフワークの一つであったと言えるでしょう。

没後には、彼の業績をまとめた著作集（全3巻）が刊行され、その文学的功績が改めて評価されました。

主な著書

『現代作家研究』
『目醒時計』
『現代作家論』
『市井集』
『無国籍の女』
『現代作家卅人論』
『文学と大陸』
『手風琴』
『蒙古の雲雀』
『満洲文化記』
『槍ケ岳の鉄くさり』
『青い頭』
『愛犬の泪』
『母恋草』
『港の見える丘』
『二都物語』
『昭和の作家たち』
『昭和文壇側面史』
『燈火頬杖』
『史伝早稲田文学』
『浅見淵の歌』
『新編燈火頰杖』

浅見淵の文学的意義

浅見淵は、小説家、文芸評論家として、昭和の文壇に多大な貢献をしました。彼の作品は、時代や社会に対する深い洞察力と、人間に対する温かい眼差しに満ちています。また、文芸評論家としては、多くの新人作家を発掘し、育成することで、日本の文学界の発展に大きく寄与しました。浅見淵の文学は、これからも多くの読者に読み継がれ、愛され続けることでしょう。

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