浅野拡

浅野 拡（あさの ひろむ）は、1927年1月2日に岐阜県安八郡輪之内町に生を受けた日本の政治家です。参議院議員を1期務め、自由民主党に所属しました。没後、位階は正五位、勲等は勲三等が追贈されています。

幼少期を故郷の岐阜県で過ごし、岐阜県立大垣中学校を卒業後、名古屋工業専門学校に進学しました。その後、1951年（昭和26年）に早稲田大学商学部で学び終えています。早稲田大学在学中には、弁論術を磨く場である雄弁会に所属し、組織全体の責任者である幹事長として活動しました。この経験は、後の政治活動における弁論能力や組織運営の手腕を培う上で重要な礎となったと考えられます。

大学卒業後は、政治の世界に身を投じ、平野力三衆議院議員の秘書として経験を積みました。議員秘書としての活動を通じて、国政の仕組みや実務を間近で学びました。また、政治活動と並行して実業界にも関わり、1954年には三野工業株式会社を設立しています。

地方政治においては、まず故郷での活動から始めました。1962年には輪之内町の町長選挙に当選し、地方自治のトップとして地域振興に尽力しました。町長を務めた後、翌1963年には岐阜県議会議員に転身し、その後4期にわたり連続して県議会議員を務めました。この長期にわたる在任期間は、県政における確固たる地位と、地元有権者からの厚い信頼を示しています。県議会では要職を歴任し、1973年には副議長に、1976年には議長に就任するなど、県政運営の中心的な役割を果たしました。

地方政治で確かな実績を積んだ後、国政への進出を目指します。1977年の第11回参議院議員通常選挙において、自由民主党の公認候補として岐阜県選挙区から立候補し、初当選を果たしました。参議院議員として、多岐にわたる国政の課題に取り組みました。

国政での活動実績が評価され、1980年に発足した鈴木善幸内閣において、大蔵政務次官という重要なポストに起用されました。大蔵省は国の財政を司る中核官庁であり、政務次官としてその運営に関わることは、浅野氏の政治家としての力量を示すものでした。

しかし、その活躍は長く続きませんでした。大蔵政務次官および参議院議員の在職期間中であった1981年3月より病のため入院します。そして、同年5月15日、急性膵炎に起因する急性心不全のため、東京都港区にある虎の門病院で逝去しました。享年54歳という若さでした。県議会議員、そして国会議員として地方と国の発展に貢献した最中の突然の訃報は、多くの人々に惜しまれました。

逝去後、その功績を称え、国家から顕彰がなされました。同年5月19日には特に厚い配慮により位記が追って与えられ、死去した日付をもって正五位、勲三等に叙せられるとともに、旭日中綬章が追贈されました。これらの栄典は、故人の生前の尽力と国家への貢献に対する高い評価を示すものです。

国会においては、逝去を悼み、同年6月3日の参議院本会議にて、中村太郎議員によって哀悼演説が述べられました。これは、国会議員の死に際して行われる議会の慣例であり、故人を偲び、その功績を公式に記録するものです。

浅野拡氏の生涯は、地方政治から国政へと至る道のりを着実に歩み、要職を務める中で突然の終わりを迎えたものでした。その短いながらも密度の濃い政治家人生は、郷土岐阜県の発展、そして日本の国政に貢献した足跡を残しています。

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