浅野物産

浅野物産：浅野財閥の商社としての興亡

浅野物産は、かつて存在した日本の会社であり、浅野財閥の商社として知られていました。その設立から終焉まで、日本の経済史における重要な役割を果たしました。

設立と反動不況

第一次世界大戦中、日本は空前の好景気を迎え、多くの財閥が商社を設立しました。浅野財閥もその流れに乗り、1918年3月に米国グレース商会と共同出資で浅野物産を設立しました。しかし、資本金は他の財閥商社と比較して少なく、百万円という規模でした。

戦後の反動不況により、古河商事、久原商事、鈴木商店などが経営破綻する中、浅野物産も大きな赤字を計上しました。グレース商会は持株を浅野財閥に譲渡し撤退。1920年に橋本梅太郎が取締役に就任すると、思惑買いから堅実な手数料主義へと経営方針を転換し、その後は安定した利益を上げるようになりました。1923年の関東大震災では被害を受けましたが、翌日から業務を再開し、復興材料の輸入に尽力し、被害を相殺しました。

先進的な福利厚生制度

浅野物産は、当時としては非常に先進的な福利厚生制度を導入していました。1925年には精勤賞与を設け、無遅刻無欠席の社員には半年ごとに賞与を支給しました。遅刻には厳しい罰則がありましたが、社員の意識向上に繋がり、多くの社員が賞与を受けられるようになりました。また、社員の休養を重視し、夏季休暇を導入したほか、社員に喫煙の害を説き、禁煙を推奨しました。

1935年には資本金を増資し、その一部を基金として、長年勤続した社員に対する恩給制度を設けました。これは、他の民間企業には見られない手厚い待遇であり、賞賛と羨望を集めました。

金融恐慌・昭和恐慌・満州事変

浅野物産は、1920年代後半の金融恐慌の影響を受けることなく、安定した利益を上げ、配当を増やしていきました。1929年には、堅実な資産内容、高い利益率、業務の繁盛ぶりから、浅野財閥随一と称えられました。当時、本社は丸の内海上ビルにあり、国内外に多くの支店や出張所、代理店を展開していました。主な貿易相手国は米英であり、日本の官公庁への納入のほか、自動車部品の輸入や自動車の製造販売、自動車学校の経営なども行っていました。

1930年の昭和恐慌では影響を受けたものの、一割の配当を維持しました。満州事変後には、為替相場の変動に対応し、海外への輸出を強化することで利益を確保しました。1932年には満州に新京出張所を設け、原油や鋼材の輸入、請負工事などを行い、業績を拡大しました。

原油輸入・多角経営

原油輸入が浅野物産の中心的な業務となるにつれて、タンカーを導入し、輸送体制を強化しました。また、日本ヴィクトリック、日本舗道、昭和鉄工、岡野バルブ製造などに投資し、多角経営を進めました。

第二次世界大戦・戦後

第二次世界大戦中、浅野物産のタンカーはアメリカ軍の攻撃により沈没し、大きな損害を受けました。戦後の財閥解体により、浅野物産は解体の対象となり、1947年には朝日物産を独立させました。その後、1961年に朝日物産と合併して東京通商となり、1965年には東通と改称しました。

東通は、鉄鉱石輸入取扱高で業界3位に位置し、旧浅野財閥の日本鋼管と協力して、海外の鉄鉱山開発を進めていました。しかし、1966年に丸紅飯田（現丸紅）と合併し、丸紅飯田が日本鋼管の主力商社となりました。浅野物産は、その歴史に幕を閉じましたが、日本の経済史にその名を刻みました。

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