浅野起州

浅野 起州

浅野 起州（あさの たつくに、本名：浅野 金六）は、1952年10月1日に生まれ、2024年11月12日に逝去した日本の実業家です。プロレス団体I.W.A.JAPANの代表としても知られ、享年72歳でした。

生涯と実業家としての歩み

宮城県岩沼市出身。地元での事業が行き詰まった経験を経て、23歳の若さで上京しました。都内では、朝は定食屋、昼は喫茶店、夜はキャバレーのレジ係といった複数のアルバイトを掛け持ちし、資金を蓄えました。その資金を元に、数年後には新宿2丁目に自らの手で最初の店を開きました。

事業は拡大し、最盛期には新宿を中心に計27店舗（うち新宿だけで24店舗）を経営するまでになりました。その業種は多岐にわたり、本屋、蕎麦屋、居酒屋などを手掛けていました。現在は約10店舗に集約されています。経営形態としては、多くの店舗を第三者へ転貸しており、元プロレスラーのチョコボール向井氏が経営する店舗も、浅野氏からの転貸であったと言われています。自身が直接運営する店舗の中で最も知られていたのは「お食事処 花膳」であり、この店はかつてI.W.A.JAPANの記者会見場としても頻繁に利用されていました。

プロレス界との深い繋がり

浅野氏は実業家であると同時に、プロレス界との深い繋がりを持っていました。過去には全日本プロレスや全日本女子プロレスの興行プロモーターとしての経験があり、特にプロレスリング・ノアの首脳陣とは親交が深かったとされます。ノアで行われていたファン向けのくじ引き企画「のあのあくじ」は、在庫処分による収益性に着目した浅野氏の勧めがきっかけで行われたものです。この成功は、後にZERO1の「ぜろぜろくじ」や、アイスリボンの「わらびくじ」など、他の団体における同様の企画にも影響を与えました。また、全日本女子プロレスが経営危機に瀕し、所属選手の大量離脱に見舞われた際には、I.W.A.JAPANの女子選手を助っ人として参戦させる形で支援を行っています。

I.W.A.JAPAN代表そしてレスラーとして

当初はI.W.A.JAPANの後援者の一人という立場でしたが、団体の運営が揺らぐ中で、1999年頃にその代表取締役に就任しました。さらに、2000年2月には自らプロレスラーとしてもデビューを果たしています。このため、『週刊プロレス』の選手名鑑にも、他のレスラーと同様にプロフィールが掲載されていました。代表となったI.W.A.JAPANでは、エンターテインメント性を前面に打ち出した運営で、一部のマニア層からの支持を獲得し、小規模ながらも新宿FACEなどを会場に継続的に興行を実施しました。また、浅野氏自身も『東京スポーツ』の「ファイトクラブ」コーナーに不定期で相談コラムを執筆するなど、多方面で活動していました。

I.W.A.JAPANでの浅野氏の活動の中でも特に語り草となっているのは、「新宿2丁目劇場」と称された、浅野氏が文字通り身体を張ったエンターテインメント企画でしょう。1999年10月には、ファイアー攻撃の習得を試みて口に含んだ灯油を誤って飲み干してしまう騒動が、そして2000年2月には、フレディー・クルーガーなるキャラクターにバイクで轢き逃げされるという衝撃的な出来事が発生するなど、数々の災難に見舞われました。

病、そして晩年

2014年2月、浅野氏は脳梗塞を発症しました。通院治療により症状は軽減したものの、以降も体調に不安を抱えることとなりました。これがきっかけとなり、2014年10月13日の新宿FACE大会をもってプロレス活動からの引退を表明し、I.W.A.JAPANもこの大会を最後に活動を休止する方針となりました。

その後も長らく闘病生活を続けていましたが、2024年7月末には自身の店「お食事処 花膳」を閉店しました。10月5日に行われたトークショーには、杖をつきながらも久々に公の場に姿を見せ、来るクリスマスイベントの開催にも意欲を示すなど、回復への兆しを見せていました。しかし、そのわずか約1か月後、11月13日、定期的に受けていた人工透析の予約日に姿を見せなかったことを不審に思った関係者が、東京都内の自宅を訪れたところ、ベッドの上で倒れている状態で発見されました。その場で死亡が確認され、72歳でした。警察による司法解剖が行われましたが、事件性はないと判断され、亡くなったのは前日の11月12日であるとされました。この訃報は、同月15日に各メディアの報道によって公になりました。

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