浜松市立佐久間図書館

浜松市立佐久間図書館は、静岡県浜松市天竜区にある公立図書館の一つです。JR東海飯田線の佐久間駅に隣接しており、駅舎と図書館の機能を持つユニークな建物として知られています。この図書館は、かつて磐田郡佐久間町が運営していた佐久間町立図書館を前身としています。

歴史

佐久間図書館の設立は、地域の交通インフラの変化と密接に関わっています。1984年、国鉄飯田線の佐久間駅が無人駅となった後、JR東海と当時の佐久間町が協力し、駅舎を新しく建て替える際に図書館を併設するという計画が進められました。これは、地元の佐久間中学校の生徒たちの発案がきっかけだったと言われています。1988年12月から建設工事が始まり、翌1989年6月22日に佐久間町立図書館として開館しました。開館当初は約5,000冊でスタートした蔵書は、その後急速に増加し、1991年6月には約15,000冊に達しました。貸し出し数や利用者数も順調に推移し、特に駅前にあった佐久間中学校の生徒が通学の際に立ち寄るなど、地域の拠点としての役割を果たしていました。2005年7月1日、佐久間町が周辺自治体とともに浜松市に編入合併されたことにより、図書館の名称も浜松市立佐久間図書館へと変更されました。合併当時の2005年度末の蔵書数は33,783冊、貸出冊数は12,743冊、利用者数は5,013人でした。しかし、2007年に佐久間中学校が別の場所へ移転したことで、児童生徒の利用が減少し、それに伴い年間利用者数も減少傾向となりました。

建物と特色

当館最大の特色は、鉄道駅の駅舎と一体になっているという点です。これは全国的にも珍しい形態であり、静岡県内では初の事例でした。建物は木造平屋建てで、図書館部分が329平方メートル、駅舎部分が31平方メートルの床面積を有しています。総工費は約8,395万円でした。館内のデザインには、地域の文化や自然をモチーフにした意匠が凝らされています。天井には、佐久間町の民話や自然を表現した美しいステンドグラスが5枚嵌め込まれています。また、入口の上部には天竜川と山並みを描いた「天竜座」、東西南北には佐久間地域に伝わる伝統芸能「川合花の舞」が飾られており、芸術的な空間を演出しています。これらの特色ある建物は、現在では地域の図書館としての機能に加え、観光名所としても親しまれています。

館内の中央には、佐久間町神妻地区で育った樹齢109年の巨大なスギの木（天竜杉）がシンボルとして据えられています。この木は、伐採時には最も太い部分で直径1.35メートル、高さ約40メートルあった大木で、25トントラックで運ばれた後、磨き丸太の姿で設置されました。天井を支える梁は木の枝、閲覧室の広々とした天井は葉をイメージしてデザインされており、館内にいながら自然の雄大さを感じられるよう工夫されています。このシンボリックな木は、訪れる人々の目を引き、中には抱きついてその大きさを体感する人もいるほどです。

館内構成とサービス

館内は、開架貸出室（一般書・児童書）、ブラウジングコーナー、閲覧室、企画展示コーナーなどで構成されています。企画展示コーナーでは、小説家の井上靖氏が天竜川について執筆した『天竜川・讃』の原稿などが展示されています。蔵書は2016年度末時点で23,017冊あり、浜松市立図書館全体の中では21番目の規模となっています。購読している新聞は静岡新聞と中日新聞の2紙、雑誌は14誌です。電話帳は静岡県全域と愛知県の一部、住宅地図は浜松市天竜区の一部（佐久間地区、水窪地区）を所蔵しています。

利用者の層は、平日には年配の方や親子連れといった地域住民が中心ですが、休日にはドライブ客や鉄道ファンなどの観光客も訪れます。図書館では、高齢者向けの体験講座や親子向けのおはなし会などを積極的に開催し、地域交流の場としても機能しています。また、佐久間地域の観光案内所としての役割も担っており、館内には地域のガイドブックやウォーキングマップなども設置されています。

利用案内

開館時間
火曜～金曜日：10時00分～18時30分（4月～9月）、10時00分～18時00分（10月～3月）
土曜・日曜日：9時30分～17時30分
休館日
月曜日、国民の祝日、年末年始、館内整理日、蔵書点検期間
アクセス
* JR東海飯田線 佐久間駅下車すぐ

※上記の開館時間、休館日は変更される場合がありますので、ご利用前に公式サイトなどでご確認ください。

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