浦和美園車両基地

浦和美園車両基地

浦和美園車両基地（うらわみそのしゃりょうきち）は、埼玉県さいたま市緑区に位置する、埼玉高速鉄道が運営する車両基地です。埼玉高速鉄道線（埼玉スタジアム線）の終点である浦和美園駅の北側に広がっています。

埼玉高速鉄道線が開業した際に運用を開始したこの基地は、同線の運行を支える重要な施設です。主な役割として、埼玉高速鉄道が所有する車両に対し、日常的な列車検査や、より詳細な月検査、さらに車両の走行性能に不可欠な車輪転削、清潔さを保つための車両清掃、そして運行中の不具合に対応する車両故障対応など、多岐にわたるメンテナンス業務を行っています。開業から間もない2001年4月以降は、当時の営団地下鉄（現在の東京メトロ）の車両の一部についても、列車検査や車輪転削、車両清掃業務を受託しています。

さらに、埼玉高速鉄道線と相互直通運転を行っている東京メトロ南北線、東急電鉄（目黒線・新横浜線）、そして近年直通を開始した相模鉄道の各社の車両も、この基地で留置され、夜間滞泊に利用されています。これにより、都心とを結ぶ広範な鉄道ネットワークにおける車両運用の拠点となっています。

基地の規模は、資料によって異なる数値が示されていますが、敷地面積は約50,700平方メートルから65,000平方メートル程度と広大です。車両の収容能力も、8両編成換算で約112両から120両と、多数の列車を留置・管理できる能力を持っています。

構内には、これらの業務を効率的に行うための様々な設備が整えられています。

構内試運転線: 基地内で車両の走行試験を行うための線路（1番線）があります。
検修庫: 検査や修繕の主要な拠点です。ここには、車両全体の修繕を行う修繕線が1線（2番線）あり、台車や主要なモーターなどを交換するための台車脱着装置や天井クレーンを備えています。また、ピット構造で車両の下部点検がしやすい月検査線が1線（3番線）と、日常的な点検を行う列車検査線が2線（4・5番線）が設けられています。
洗浄線: 車両の外部を清掃するための線路です。手作業での洗浄に対応する洗浄線が2線（6・7番線）あります。
留置線: 運行されない車両を留めておくための線路が8線（8番線から15番線まで）整備されています。
転削線: 構内試運転線から分岐・折り返す形で、車輪の形状を整える車輪転削庫につながる線路があります。
機械洗浄線: 同じく折り返す形で、車両の自動洗浄装置を備えた線路が1線あります。

この基地に常駐しているのは、埼玉高速鉄道が所有する2000系電車、合計60両です。しかし、前述のように、相互直通運転により多社の車両も入庫します。具体的には、東京メトロ南北線の9000系、東急目黒線・新横浜線の3000系、5080系、3020系、そして相模鉄道の21000系などが担当車両として基地を利用しています。埼玉高速鉄道の自社編成が検査などで複数入場し、予備編成が不足するような状況では、東京メトロや東急、相鉄の車両を一時的に借り入れて運用を維持することもあります。

浦和美園車両基地の周辺には、サッカーの国際試合なども行われる埼玉スタジアム2002があります。将来的には、線路の一部が岩槻・蓮田方面への延伸時に本線として使用される計画も存在し、基地は将来的な路線拡張にも対応できる構造になっています。敷地の位置としては、管理棟を含む東側（浦和美園駅側）はさいたま市緑区大字南部領辻に、西側（線路の終端側）は大字中野田にまたがっています。

地域との関わりとしては、毎年ハロウィン時期に開催される「浦和美園まつり＆花火大会」に合わせて、基地が一日限定で一般公開されることがあります（開催日は年によって若干変動）。この公開イベントでは、自社の2000系や東京メトロ9000系に加え、東急の車両（3000系、5080系、3020系のいずれか）が展示されることもあり、2024年10月27日の公開時には、初めて相鉄21000系が展示され話題となりました。このような機会は、普段見ることのできない鉄道車両や基地の役割を知る貴重な場となっています。

特筆すべき出来事として、2004年8月には、東京都交通局6300形電車のうち1編成が、誘導障害の試験のために東京メトロ南北線を経由してこの基地まで走行した記録があります。これは都営6300形としては唯一、埼玉県内に入線した事例とされています。

このように、浦和美園車両基地は、埼玉高速鉄道の車両保守だけでなく、広範な相互直通ネットワークを支える車両管理、さらには将来の路線拡張や地域イベントまで、多様な側面を持つ鉄道施設です。

参考文献

日本鉄道車両機械協会『ROLLINGSTOCK＆MACHINERY』2001年4月号
鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2001年8月号

関連項目

* 日本の車両基地一覧

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