浦山桐郎

浦山桐郎 - 日本映画の名監督

浦山桐郎（うらやま きりお）は、1930年12月14日に兵庫県相生町で生まれた日本の映画監督であり、1985年に亡くなるまでの約55年間の短い生涯の中で、多くの映画作品を残しました。彼の父は歌人の浦山貢であり、母は豊子でしたが、母は出産後に急性腹膜炎を患い、子供が生まれて間もなく他界してしまいます。父は再婚し、彼は名古屋に移り、高校を経て名古屋大学文学部を卒業しました。

映画の世界には、松竹の助監督の応募を試みたものの身体検査で不合格となりましたが、日活の入社試験には合格し、1954年より助監督としてキャリアをスタートしました。彼の監督デビュー作は1962年の『キューポラのある街』で、この映画は日本映画監督協会新人賞やキネマ旬報ベストテン第2位など、多くの賞を受賞しました。これは貧しい若者のリアルな生き様を描いた作品であり、彼の独自の視点と演出が光ります。

その後、1963年には『非行少女』を手掛け、この作品はモスクワ国際映画祭で金賞を受賞しました。さらに、彼は遠藤周作の原作を基に実験的な演出を試みた『私が棄てた女』を制作しますが、これは商業的に成功するものの、同作は原作者の不満も招く結果となりました。彼はその後もさまざまな作品を手掛け、大竹しのぶのデビュー作となる『青春の門』シリーズや、子ども向けアニメ作品など、多彩なジャンルで活動しました。

浦山桐郎は、「女優育ての名手」として知られ、特に吉永小百合や大竹しのぶを育てた功績があります。特に、小林トシ江を自宅で特訓したエピソードは有名です。彼の監督スタイルは、繊細で独自の感性を生かしたものではあったものの、時には原作者との意見対立があったり、経済的には苦しむ部分もありました。

監督業の傍ら、彼は野球や阪急ブレーブスに対する熱い情熱を持ち、1978年にはドキュメンタリー映画『78ザ・ベースボール 鍛え抜かれた勇者たち 練習編』を制作しました。同作は当時では珍しいスポーツドキュメンタリーであり、彼の記録映像としての意義を持つ作品です。

また、浦山は独自の個性を持った人物であり、大の風呂嫌いとして知られています。一度、酔って鈴木清順の家に行った際、風呂場に閉じ込められたエピソードは面白い逸話として残っています。彼の生涯は、映画に対する情熱と、個人的な苦悩が交錯した印象的なものです。

1985年、彼は吉永小百合主演の『夢千代日記』を完成させた直後に急性心不全で亡くなりました。享年55歳。浦山桐郎の人生と業績は、映画界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、映画監督としての栄光と同時に、その影に潜む複雑な人物像を映し出しており、今後も多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

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