浮遊物質

浮遊物質（SS）とは

浮遊物質（Suspended Solids、SS）とは、水中に分散している不溶性の微細な粒子状物質の総称です。これらの粒子は、水に溶け込まずに浮遊または懸濁している状態にあり、その粒径は一般的に2mm以下と定義されています。SSは、河川、湖沼、海洋などの公共用水域における水質を評価する重要な指標の一つとして用いられています。

浮遊物質が水環境に与える影響

浮遊物質濃度が高い水域では、以下のような影響が生じる可能性があります。

透視度の低下: SSが多く含まれる水は濁って見えるため、光の透過が妨げられます。これにより、水中の植物プランクトンや藻類の光合成が阻害され、生態系の生産性が低下する恐れがあります。
溶存酸素の消費: 汚濁が進んだ水域では、SSの大部分が有機物で構成されている場合があります。これらの有機物が微生物によって分解される際に、水中の溶存酸素（DO）が消費され、魚介類などの水生生物が生息しにくい環境になることがあります。
生態系への影響: SSは、水生生物の呼吸や摂食を妨げたり、産卵場所を埋め立てたりするなど、直接的な影響を与える可能性があります。また、SSに有害物質が付着している場合、食物連鎖を通じて生態系全体に悪影響を及ぼすことも懸念されます。

浮遊物質に関する環境基準と排水基準

日本では、公共用水域の水質保全を目的として、生活環境に関する環境基準が定められており、SSについても基準値が設定されています。また、工場や事業所から排出される排水についても、排水基準が定められており、SSの排出量が規制されています。これらの基準は、水質汚濁防止法に基づいて運用されており、違反した場合には罰則が科せられることがあります。

浮遊物質の測定方法

浮遊物質の測定方法としては、主に以下の2つの方法が用いられています。

1. ガラス繊維ろ紙法: 一般的に広く用いられている方法です。一定量の試料水を、予め重量を測定したガラス繊維ろ紙（孔径1μm程度）で吸引ろ過します。ろ過後、ろ紙を105〜110℃で2時間乾燥させ、乾燥後のろ紙の重量を測定します。ろ過前後のろ紙の重量差から、試料水中のSS量を算出します。
2. 遠心分離法: ろ過しにくい試料（例えば、粘土分を多く含む試料）に適用されることがあります。試料水を遠心分離機にかけ、沈殿した固形物の重量を測定することで、SS量を推定します。

浮遊物質と関連する用語

懸濁物質: 浮遊物質とほぼ同義で用いられる言葉です。
分散系: 固体粒子が液体中に分散している状態を指します。浮遊物質は、分散系の一種と言えます。
懸濁運搬物質: 河川などにおいて、水流によって運搬される浮遊物質のことを指します。

浮遊物質は、水環境の健全性を評価する上で重要な指標であり、適切な管理が求められます。

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