海人藻芥

海人藻芥（あまのもくず）

『海人藻芥』は、室町時代に編纂された日本の有職故実に関する文書です。応永27年（1420年）に完成し、著者は恵命院権僧正の宣守です。この書は、鎌倉時代から室町時代にかけての僧俗の礼儀や風俗に関する情報を集録しています。

書の特徴

『海人藻芥』は、若干のカタカナが混じった和様漢文で書かれており、後半部分では漢字やカタカナ、さらには漢文が交じり合った独特な文体が見られます。特にこの書の命名について、巻末には「ムサラシキ事書アツメタレパ、此一帖ヲ海人ノ藻芥ト名付ベシ」という記載があり、これが内容の要約とされます。

また、前半の最後には「依相承院命任筆之、努々不可有外見者也云々」との文があり、これは相承院からの命令に基づいて書かれたものであり、外部に見せることを禁じられていたことを意味しています。しかし、この表現が書全体を指しているのか一部分のみに留まるのかは明確ではありません。

内容の概要

この文書の中では、僧侶や一般市民の間で使われる書札の礼儀、また僧俗の官職や職掌に関連する用語、さらには装束や調度品、車輿、さらには座る際の作法や進退に関する故実が記録されています。また、飲食や器具の使用、さらには女房に関する作法なども取り扱われており、僧俗の生活様式や文化が伺えます。特に「畳之事」や「居所ノ事」は、日本の建築史、とりわけ寝殿造や中世の上層住宅史において非常に重要な資料とされています。

後者の「居所ノ事」では、「大臣家」や「名家以下月卿雲客の亭」といった階級に応じた造作や建物の構成が記されており、貴族の生活様式や住居の特徴を知るうえで貴重な情報源です。

書の伝承と保存

『海人藻芥』は、写本が3冊伝わっているほか、江戸時代の元禄7年（1694年）には版本が出版されています。また、現在では『群書類従』巻492に収録されていることも知られています。

この書は日本の文化史、特に暦の制定や宗教行事、政治体制の変遷など、当時の人々の生活や考え方を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。『海人藻芥』は、僧侶から世俗の人々までも含めた広範な文化財を記録した文書として、研究者や歴史愛好者にとっての貴重な資産であり続けています。

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